月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

長谷川りん二郎展@平塚市立美術館

もう何かだいぶ前の話になりますが、平塚市美術館で開催されている長谷川りん二郎展に行ってきました。
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長谷川りん二郎といえば片方のヒゲのない猫が代表作。というか、迷宮美術館日曜美術館でこの猫を取り上げてなかったら、たぶんこの型に気づいてなかったと思います。ということで、客寄せ担当は片ひげの猫さんなのです。
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さて展覧会のほうは、基本的に時系列の順に並んでいます。

初期の作品は解説を見なくてもマティス(キュビズム)の影響下にあったことがよくわかります。風景を描いた作品(13「函館風景」や18「荻窪風景」など)は、風景の現実離れ感が強いです。
でも、16「兎」をみると、動物を描くときは細密画になっているあたり、例の猫への道がつながっているようです。

その後フランスに留学すると、絵に若干現実感が出てきます。なんだけど、今度は極端に遠近法が強調されていて……。写真との違いを出そうと試行錯誤をしていたのかもしれません。

さらに、フランスから帰国すると、風景画が普通な感じになる、その変遷が面白いです。


さらにその後、戦後の絵画については量があるのでテーマ別になってました。最初は静物画。静物画は判ってないので基本はスルーなんですが、この展覧会では量があるのでスルーできません。スルーできないので見てみると、全体的に色が青方変移していて、それが浮遊感のようなものになっていると感じました。ただ、そのような浮遊感は、光や光沢を描きたかったのかなぁと思うと、なんとなく納得できます。

それから静物画として植物が描かれていることもありますが、この場合はひたすら細かい。葉っぱが一枚一枚違う色になっています。じっくり観察して描くことを本当にやっていたんだろうなぁ。そういう視点で見ると、例の猫も、動物を描きながら静物画だったのかもしれません。


最後に風景画。こちらは中に人を入れているのが良い感じでした。それにしても木の葉が細かいです。特に好きな感じなのが56「竹林」と62「早春」でしょうか。田園を二人の子供が歩く様子、素敵です。


ということで、猫一匹を目当てに行った展覧会でしたが、結構楽しめました。一人の画家の作品を年代順にたどると、その人と一緒に成長しているような感じになって色々なことを考えるようになるのが、面白かった理由のような気がします。