月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

2011年展覧会ベスト10

毎年恒例ではありますが、今年も展覧会ベスト10を発表する時期がやってきました。今年行った展覧会は(12月30日時点で)326件。これを10件に絞り込むのも一大事業です。とりあえず、毎月月末に書いている、その月のまとめで◎をつけた展覧会に絞っても50件以上あるわけでして……。

ま、愚痴は兎も角として、今年の展覧会ベスト10、発表です。
(参考)2010年2009年2008年

  1. 酒井抱一と江戸琳派の全貌(姫路市立美術館千葉市美術館)
    文句なしの第1位は、酒井抱一でした。今年は酒井抱一の生誕250年ということで年初の畠山記念館を皮切りに様々な企画展が開かれましたが、この展覧会は別格でした。その画家の画業を幼少期から辿っていくという、西洋絵画や近代絵画では良くあるけど江戸絵画では余り見かけない展示が理解に役立ちました。単純な花鳥風月だけではないぞ、抱一は、という企画者の声が聞こえるような。
    あと、其一さん素敵です其一さん。描表装とかそんな技法も含めて、奥の深い展覧会でした。
  2. 五百羅漢(江戸東京博物館)
    この展覧会も凄かった。要するに狩野一信の描いた五百羅漢全百幅がずらっと並んでいるだけと言えばそれまでなのですが、絵に力がありますし、展示も上手かったです。今回特注と思われる、掛軸専用の薄い展示ケースが並ぶ様は、今までの江戸東京博物館のイメージをぶち壊す破壊力でした。
    羅漢さんたちは来年アメリカに行くそうですけど、かの地でも人々の度肝を抜いていただきたいものです。
  3. フェルメールからのラブレター(京都市美術館・bunkamura)
    フェルメールをメインにした展覧会は、ほかの作品のレベルがバラバラで、結果としてフェルメールの足を引っ張ってしまうことも多いのですが、今回は点数を50点弱と絞った上に、テーマをコミュニケーションと、これも絞り込んでいたため、フェルメール以外の作品も質の高いものが揃いました。点数が少ないぶん、ゆったりと展示されていて、京都も東京もフェルメールには最大限のスペースを割り当てていましたが、だからフェルメールが偉そうとか感じさせないのも上手だなと思ったり。心残りは、仙台には見に行けなかったことでしょうか。
  4. 天竺へ(奈良国立博物館)
    奈良国立博物館の東新館を使って、玄奘三蔵絵巻全12巻を全て展示してしまおうという企画。五百羅漢もそうですが、全部を見るのって楽しいですね。是非次は、春日権現絵巻の全館展示を期待します(修復が終わってから、ね)
  5. 平山郁夫と文化財保護(東京国立博物館)
    平山郁夫と辿るシルクロード仏像の旅、という感じの展覧会。平山郁夫も好きだがガンダーラ物も好きな私にとって、一粒で二度美味しい展覧会でした。薬師寺の大唐西域壁画は、薬師寺で見るときよりも見やすい位置で、高さ方向の移動でずいぶん印象が変わるものだと思ったのを覚えています。
  6. ヴィジェ・ルブラン展(三菱一号館美術館)
    今年一番の、可愛い展覧会。あまりの可愛さに、メモには「かわいい」「かわゆい」しか書いてないわ、メモがとれないので感想は書けないわ、散々でしたが、いつも言うように可愛いは正義なのです。何となく、女性が女性を描く方が、内面の可愛さまで表現出来て、結果として私が萌え転がる確率が高くなるのではないかと、そんなことを思ったりもするのですが、どうなんだろ?
  7. 百獣の楽園(京都国立博物館)
    今年の夏の展覧会は動物が空前の大ブームで、各地の美術館で動物をテーマにした展覧会が開かれていました。その中で一番凄かったのが京都国立博物館。京都中から集めた国宝や重要文化財をただただ動物ごとに分類して並べる間抜けさ、更に解説は板橋区立美術館直輸入という感じのひねりの効いたもの。頭のいい人が本気で莫迦をやると凄いことになる、という実例でした。頭を使わずに見られる展示も、時には良いです。
  8. あこがれのヴェネチアングラス(サントリー美術館)
    15世紀から現代にいたるヴェネチアングラスの歴史をひもとく展覧会。ガラスの煌めきは少し動くだけでも変化するので、作品の周りをずっと回りながら見ることになります。ある意味挙動不審ですが仕方がありません。
    この展覧会、サントリー美術館のフロアが2つに分かれていることを生かして、4階は昔の作品、3階は現代の作品と分かれていて、フロアごとの雰囲気の違いも面白かったです。
  9. 森と芸術(東京都庭園美術館福井県立美術館)
    森というものを芸術ではどのように表現してきたのか、というテーマの展覧会。森という身近な題材に関するものを網羅的に集めていたので、コロー、モロー、ガレ、マグリットとおなじみの名前多数でした。あと、東京都庭園美術館という空間に、実にマッチした展覧会だったなと。福井まで追っかけで見に行ったのですが、福井で見るよりも東京で見た方が、空間の魔力で格段によく見えた展覧会でした。
  10. 宝石サンゴ展(国立科学博物館)
    紅色のサンゴについて、生物としてのサンゴと宝石としての珊瑚の両面から解説していく展覧会。何故か特別展ではなく平常展の特集展示扱いでしたが、内容には手抜きが無くて、楽しめました。珊瑚で作る仏像とか、隣の東博に有ってもおかしくないものもあって、科学博物館の枠を超えた展示でした。


こうやってみると、酒井抱一以外は8月頃までの展覧会ですね。秋以降も良い展示はありましたけど、今年は8月の関西(百獣の楽園、天竺へ、フェルメール)が最高だったかなと。あの辺りから、今まで月1回だった関西詣でが3週間に1回になった気がするのですが……。

とりあえず、無理矢理今年を総括すると、全部見せます、という系統の展示は満足度が高いということかしら。あと、可愛いは正義(それは今年に限った話じゃないでしょ)。そんなところでしょうか。

追記

毎月やっている今月のまとめのなかの、行った展覧会一覧、その12月の分を書いておきます。

一寸◎を大盤振る舞いかもしれませんが、良かったんですってばっ、どれも。