月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

平清盛展@江戸東京博物館

江戸東京博物館の正月の企画展は、ここ何年間かは大河ドラマのタイアップと決まっています。
大河ドラマとのタイアップというと、ドラマを見る人のためのお勉強講座のようなイメージで、何となく手抜き(失礼)な感じがしますが、年を経るごとにレベルが上がっているような気がします。去年の「江」展も良かったですし(展覧会の出来と大河の出来は無関係ということですね)。


ということで今年のお題は「平清盛」です。

展示はまず、平家が栄えるまでの軌跡から始まります。ありがちな展示だと、ここで当時の日記とか上皇の直筆とか展示して、研究としては正しいものの、一般人置いてきぼり、ということになったりしがちですが、今回は違う。歴史的事実の解説は「平氏ニュース」という壁に貼った解説ボードに任せて、展示のほうは平家物語平治物語源平盛衰記といった物語の絵巻を使って、場面の説明をする、という手法でした。絵になると断然判りやすくなりますね。
またこれらの絵は大和絵の手法で描かれているので、大和絵大好きな私としても、ポイントが高いです。特に良かったのが「奈良絵本 平家物語」と「源平盛衰記絵巻」。「奈良絵本 平家物語」は江戸時代に作られた御伽草子で、とても発色がいいです。きっとと何処かの大名家で、姫君が夜な夜な読んでいたのではないか、と、妙な妄想もしたりして。
それから「源平盛衰記絵巻」は今回初公開だそうです。通常絵巻は絵の部分と文字の部分が交互に登場しますが、この絵巻は絵の部分がずっと続いていて、絵の中に余白があるとそこに詞書きがある、という感じ。珍しい感じです。でもなんか、絵が連続する方が流れがあっていいですね。この絵巻も、非常に状態が良く、発色が素晴らしかったです。


次の第2章は、清盛をめぐる人々。ここは普通に肖像画などがありましたが、面白かったのは考古資料。以仁王の住んでいた高倉宮は今の京都文化博物館のある場所と言うことが判ったり、木曾義仲が焼いた建物のところからは、ちゃんと焼けた瓦などが出てきていたりと、説明を読むと判るようになってました。
そうそう、今回は説明が判りやすくて、各作品に付けられた説明文に、必ず1行キャッチフレーズが書いてあって、これを読むだけでも印象が深まります。板橋区立美術館のように、受けを取る方向に走ってないもの良いです。


そして第3章は、いよいよ平家納経。もう平家納経は飽きるほど見ていますけど(平家納経の「裏」だけというのもありましたが)、今回は展示空間が広いこともあって、今までよりもじっくり見ることが出来ました。
で、見て思ったのが、琳派だなぁと。もちろん平家納経は俵屋宗達の活躍する400年前のものですが、鹿の絵とか、金箔を撒いた料紙とか、琳派のモチーフだよなぁと。修理をしたのが俵屋宗達なのも判る気がします。
そのほか、このコーナーでは厳島神社に伝わる平家ゆかりのものもありました。平安時代の鎧が、ほとんど損傷のない形で残っているのが凄いです。だっ手950年以上前のものですから、ね。


第4章は、平氏の時代と新たな文化。ということで、南宋との貿易の話などが出ています。平重盛が所持していたと伝えられる青磁の茶碗は、足利義政が代替品を入手しようとしたら、今の技術じゃこれは作れないからと修理だけされて返却されたという言い伝えのもの。いろんなところで歴史初なっているなと。
このほかにも、磁器の類が沢山ありました。


そして最後の第5章は、平家物語の世界。要するに清盛の死から壇ノ浦までの期間です。再び大和絵の世界。見ていて楽しいです。
ここでは、那須与一が扇に矢を当てた場面の屏風がありました。これが良かったです。当てた瞬間、扇が飛んで行っている場面を、良い構図で描いていました。



ということで、平家納経だから、大河ドラマだから、という理由で行くにはもったいない、ハイレベルな展示でした。大和絵が好きな方にはかなりおすすめです。