月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

ファインバーグコレクション展@江戸東京博物館

基本的に若い頃から〆切までに物事ができれ入ればいいやと思うこの多い性格の私でして、展覧会についても会期末までに行ければいいやと思いがちなのです。ということで、7月15日で会期末となる、江戸東京博物館で開催中のファインバーグコレクション展に行ってみたのですが……いや、やられました。こんな時期まで来ないですみません。私にしては珍しく、測量野帳に4ページもメモを書くほどの充実度でして。
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そんな訳で、測量野帳のメモをベースに、展覧会を振り返ってみたいと思います。
いや、本当にいい作品が多いので*1、あと2日しかないですけど両国まで行ったほうがいいですよ、皆さん。

展示の方は、「琳派」「文人画」「円山四条派」「奇想派」「浮世絵」と5つのジャンルに分かれていましたので、それぞれごとに振り返ってみたいと思います。

琳派

まず最初は琳派で、入り口を入ってすぐのところで、可愛い猫が迎えてくれます。

  • 俵屋宗達「虎図」
    と思ったら、猫じゃなくて虎でした(汗)。輪郭をぼやかして描いているように見えて、一本一本の毛並みがちゃんと描かれている、技巧的には素晴らしいけど、やっぱり猫……(笑)
  • 中村芳中六歌仙図」
    たらしこみすぎの芳中さんらしく、たらしこみ過ぎてちょっと……。というか芳中さんってデッサンに疑問を感じる時が時々あります。
  • 酒井抱一「柿に目白図」
    見るからに花鳥12ヶ月の一部と思える、抱一さんのメジロ。メジロの後頭部が可愛いわ(目の付け所がおかしい)
  • 鈴木其一「山並図小襖」
    其一さんが描いた、山並みの図。これを見て思い出したのがなぜか奥村土牛さんの「吉野」なんですが。吉野のような色彩はありませんが、近代日本画を思わせる構図だと思います。
  • 鈴木其一「松島図小襖」
    宗達の松島図屏風を思わせる絵ですが、鋭さを感じるところがカミソリ其一さんらしいです。
  • 酒井抱一「十二ヶ月花鳥図」
    抱一の花鳥12ヶ月。7月のカエルが可愛いです。あと12月の雪の散らし方が良いですね。
  • 神坂雪佳「四季草花図」
    これまた神坂雪佳さんらしい華やかな絵柄です。中央の上部に空間があるのが、屏風にした時に活きている気がします。
  • 鈴木其一「群鶴図屏風」
    其一さんの代表作として見ることの多い、鶴の屏風です。後ろの波の表現とか、琳派総決算という感じもします。

文人画

  • 池大雅「孟嘉落帽・東坡戴笠図屏風」
    琳派の装飾的な世界から急転直下。この3頭身のおっさんは一体……。思わず曾我蕭白かと思ってしまいましたわ(汗)。所々、朱が散らしてあるのが、筆を振って散らした感じで面白いです。
  • 池大雅「豊年多祥図」
    これもまた、ゆるい感じの絵なんですが、どうも池大雅は私はまだ良く判ってません。
  • 山本梅逸「嵐山春景・高雄秋景図屏風」
    山本梅逸というと愛知県美術館にいくと会えるイメージでして、ここでお会いするとは思ってませんでした。パッと見ただけで嵐山と判る構図になってます。そして、桜の描き方とかすごく丁寧。あと、座り込んで下から見ると、嵐山の高い感じがよく判ります。今度から、嵐山を描いた絵を紹介するときは、この絵を最初にしようと思います。
  • 岡田米山人「蘭亭曲水図」
    幻想曲水図という感じで……。枝なのか岩なのかよく判りませんが、そのよく解らないものが曲がりくねっていて、怖い世界になってます。ちょっとここではお酒を飲みたくない感じです(汗)
  • 山本梅逸「畳泉密竹図」
    再び山本梅逸さん。奥の方、中の方、手前と3段にわたる滝と川の流れを描いてますが、遠近表現が上手いですね。

円山四条派

さてここからは円山四条派です。この方々は写生に重きを置いていたこともあって、動物がいろいろ出てくるのが楽しいです。

  • 円山応挙「鯉亀図風炉先屛風」
    鯉の描かれた、涼し気な夏の屏風です。後ろが透けるようになっているのが判りますが、出来ればガラス越しでなしに確認したかったところです。
  • 円山応挙「孔雀牡丹図」
    いいぞ、孔雀かっこいいぞ。応挙の孔雀は格好良くて好きです。これが伊藤若冲になると目が爪形の弧を描く、いわゆるエロ目になるので、格好良いにちょっと桃色が入るような感じになります(なんの話だ)
  • 森狙仙「滝に松樹遊猿図」
    猿がとてもリアルです。竹内栖鳳に通じる、動物園で実物を見たでしょうと言いたくなるリアルさですが、当時は動物園がないのでどうしたんだろ?。明らかに中国直輸入のテナガザルではなく、ニホンザルって判ります。
  • 森徹山「春鶴秋鹿図屛風」
    描かれてる鹿の角がリアルです。あと、右の方に描かれてる子鹿の目が可愛くて好きだわ。
    それよりも、この辺りの床が軋む音、あれは何とかならないのかしら……。私にしては珍しく、耳障りに感じてしまいました……
  • 柴田是真「二節句図」
    2幅の掛け軸ですが、左側がゆるく描かれた農家、右側がかっちりと描かれた貴族の家。両者の対比が面白いです。

奇想派

奇想派といわれると、「は?派ですか?」と言いたくなりますが、それは置いて。ある意味無差別級の楽しさではあります。

  • 狩野山雪「題李欵幽居図屛風」
    狩野山雪の山水。月夜と解説にあるので目を凝らしたら右上の方に小さな月がありました。定規で描いているかと思えば、岩には勢いあったり。純粋に水墨画として楽しく見ることができました。
  • 伊藤若冲「菊図」
    この茎の細さと花の大きさのアンバランスは何なんだろう?毎度のとおり、若冲さんの不思議な世界でございます。
  • 曾我蕭白「宇治川合戦図屏風」
    おお、宇治橋が壊れとる。これだけでもいかにも合戦中という感じですね。見得を切るような顔の表情が蕭白さんらしいなと。
  • 長沢芦雪「拾得・一笑・布袋図」
    芦雪~。犬~。犬は可愛すぎ、反則です。
    いや、正確には販促だったようで、この犬の絵柄のトートバッグを思わず買ってしまったです……

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浮世絵

最後に浮世絵。肉筆浮世絵をこの数まとめてみるのも、そうそう機会のあることではないですね。

  • 菱川師平「花見遊楽・吉原風俗図屛風」
    桃山時代からの流れを感じる群衆図。こういう民衆の踊る絵は好きですわ。
  • 歌川豊春「春景遊宴図屛風」
    これは、極端なまでの遠近表現が素晴らしいです。屏風の谷折りになっているところをうまく使ってますが、多分右側から見ることを想定した遠近法なんでしょうね。試しに右側の下の方から覗いてみると、かなりいい具合のパノラマ感でした。

ふぅということで、多分3割くらいの作品に触れてしまった気がしますが、それだけ良い作品が目白押しということで。関東地方の方はこの週末に、関西の方は8月にMIHOまで、ぜひぜひ見に行きましょう。

*1:作品は良いのだけど、会場は難ありなのが江戸東京博物館。床の軋む音が気になるところとかもありましたし……