月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

川瀬巴水展@日本橋高島屋(その1)

今日の夕方ですが、日本橋高島屋川瀬巴水展を見てきました。
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この展覧会、去年2度ほど見た(1月の千葉と、3月の横浜)展覧会の巡回ですので、再度はは見なくてもいいかなと思っていたのですが、なんとなく時間に余裕があったので見ることにしたのでした。
で、一度会場に入ってしまえば、そこは川瀬巴水。好みですからちゃんと見てしまうわけで……、気がついたら90分ほどかけて見ていましたわ。


そんな川瀬巴水展の感想ですが、全体を通しての感想は過去に展覧会を見た時の駄文に記載していますので、今回は会場でのメモを元に、もう少し詳細に書いてみたいと思います。


まずは第1章、大正7年〜12年(1918〜1923)、関東大震災以前の作品です。
最初に展示されていたのは最初期の作品。縦横比が3:1位の縦長な判型と、ゴツゴツした感じの描き方やバレンの摺りむらが目立つのが特徴的です。

『旅みやげ第一集』。
かなり早い時期から様々な場所を描く作品を作っていたのですね。また、水辺や月夜などを舞台にすることが多いのも、最初期のこの頃から一貫しているようです。
このシリーズでは、「仙台の山の寺」が青一色の濃淡だけで表現しているのが目を引きます。
また、「石積む船(房州)」も、夕焼けの表情を朱の濃淡で示しているのが良いです。

『東京十二題』。
このシリーズは、構図を色々工夫しているのが見どころで、例えば、タイトルに「河岸」とあるのに水辺が殆ど見えないとか、ひねりがあります。
「木場の夕暮れ」では、水面に映るシルエットのゆらめきが良かったです。

『東京十二ヶ月』。
タイトルは12ですが、5枚しか発行されなかったシリーズです。丸い判型や、光線の感じが実験的だったりと、実験作シリーズという感じがします。

『旅みやげ第二集』。
1年で28作を出すという大量生産のシリーズです。
「雪の橋立」は、降る雪がまるで点描のようで。
佐渡真野湾」は、広角ワイドで夕焼けを描いていて、陸地が夢見るようで。
それにしても、このシリーズは佐渡や越後を描いたものが多いです。私は佐渡に行ったことがないのですが、佐渡に行くときは、この辺りの作品を持って行ってみたいです。

『日本風景選集』。
300枚限定で販売されたシリーズで、毎月3枚ずつ、前12回36作品が出る予定だったところ、11回めの準備中に関東大震災が発生して一時中断となった、波瀾万丈のシリーズです。なんとなく、このシリーズは線に粗さがあるような気がします。
「雪の金閣寺」は、降る雪の点描度合いがいよいよ激しくなってます。
「島原九十九島」。島原大変肥後迷惑の時に出来た島ですが、島よりも夕焼け入道雲が印象的です。


第2章は、大正12年〜昭和20年(1923〜1945)。震災から終戦の時期です。
震災で焼け出された後に、一時期は創作意欲も低下しますが、版元の後押しもあって、102日間の創作の旅に出ます。そこから、川瀬巴水の最も脂が乗った時期が始まるのです。

『旅みやげ第三集』。
その、102日間の旅の成果がこのシリーズです。このシリーズは摺りの状態が良いのか、
「別府の朝」。藍色のグラデーションが濃くて気持ちいいです。夜明けの夜の色や海の色を藍色で表現するだけでなく、さざなみも藍色の濃淡で表現しているのがすごいなと。
「飛騨中山七里」は、川岸の雪の質感がリアルなのが目を引きます。
「出雲松江」は(曇り日)(おぼろ月)(三ヶ月)の3種類がありますが、同じ場所を摺る色と濃淡だけで時間を変えてしまう魔法が素敵です。

『東京二十景』。
このシリーズは、川瀬巴水の中で一番売れたシリーズだそうで、「芝増上寺」が3000枚、「馬込の月」が2000枚だったとか。何人もの手を介する木版画は高級品で、そんなに多くの人が買い求めるものではなかったのでしょうね。
このシリーズでは、近代化する東京の姿を描いたものが登場しだします。
まず、「新大橋」。夕闇の中に佇む鉄の橋の威容が、無機質感を強調しているようです。そして、該当の電球がなんとも暖かそうです。この時代なのでガス灯ではないのですけど……。
「上野清水堂」は、桜の色の濃淡が見事。
「滝の川」は、今は親水公園化して水が流れてませんが、水が流れているときはこんな感じだったのかなぁと思ったりして。


ちょっと長くなってきましたので、2章の続きからは(展覧会終了後になりますけど)火曜以降にアップしますね。

追記:アップしました