月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

川瀬巴水展@日本橋高島屋(その2)

日本橋高島屋での川瀬巴水展、12日で終わってしまった後に感想を書くのもなんですが、前回が途中までしか感想を書いてませんので、続きを書いておきますね。


ということで第2章の後半からです。

『東京二十景』の後に、少しシリーズものでない作品が続いていました。
「今井橋の夕立」。今井橋ということは南行徳と一之江の間の江戸川を渡る橋でしょうが、当時は木製の橋だったようで。そして江戸川には川岸には葦がぎっしりと。雨の線と葦の傾きで風自体が目に見えるようです。
清洲橋」は、鋼鉄で出来た吊り橋の形状がかっこいい。夕暮れの暗さが、鉄の質感を引き立てているようです。
「亀戸の藤」。これは藤の花の繊細さ、細かさに目が行きます。あと、太鼓橋の一番高いところにいる、おかっぱの女の子が可愛いかと。

東海道風景選集』は、広重に似ていると言われるので、広重の東海道五十三次との違いが判るように、描き方や画題を変えて提示しているシリーズのようです。
「馬入川」は、要するに相模川から見た富士山を描いているのですが、富士山の裾野まで描かれていて、茅ヶ崎寒川から裾野が見えたかな?と気になっています。現地での確認をしないとです。

『日本風景集東日本編』ということで、全国を相手にしたシリーズがまた登場します。東日本編では東北を丹念に描いている感じでした。
そんな中の1枚、「松島双子島」は、満月の明かりが島と島の間に差し込んでいるのが印象的です。この作品は試し刷りがいくつか展示されていましたが、中には夕暮れのものもあって、色が変わると印象が変わります。

そして引き続き『日本風景集Ⅱ 関西編』。関西なので名所旧跡が多い感じ。
「京都知恩院」は門をクローズアップで描くという斬新な構図が印象的です。その門の奥に男女がいるのですが、気になりますなぁ

で、ここで、『巴水と富士山』と題した小特集がありました。富士の見える名所は多いですから、当然作品も多くあるわけで。
河口湖」。雲一つない青空の富士山が描かれていますが、現地でスケッチしたのであろう下絵では雲があって、富士山の一部が隠れていたりして、違いが面白いです。
「箱根の富士」は、五合目より上をアップで描いた作品。富士山より松の木のほうが高いとか、構図で楽しんでます。
それから富士山の全景を描いた「富士川」。これは山の形がリアルなのが特徴的です。

『朝鮮八景』『続朝鮮八景』という、内地を飛び出して朝鮮半島を描いたものもあります。大陸を描いているので地形はダイナミックですが、建物とか風景は日本的に見えちゃうのは、日本の景色を描き続けた画家だからこそ、何でしょうかねぇ。

『新東京百景』は、百景といいつつ、6点で完了というシリーズ、って第1章にもそんなのが有りましたね。このへんは版元との方向性の違いのようなものも関係しているとか。
たとえば「芝大門の雪」は、スケッチには描かれていない円タクが門を通行中だったりしますが、こういう現代と過去が混ざり合うような構図が問題になったのかもしれません。

2章の最後は『戦中の巴水』という小特集。この時期は自由に絵を発表することができないだけでなく、自由に旅をすることも出来なかったので、過去の作品を水彩で再現して販売していたりしたそうです。
この時期の作品として「越後小千谷」というのがありましたが、道路は雪が深いのですが、屋根に無い辺りがちょっと疑問で。時期的に、実際に現地に行くことなく描いたのかもしれません。


最後に第3章は昭和20年〜昭和32年(1945~1957)。戦後の時期です。この時期は進駐軍の方がお土産でお買い上げしていくので、結構忙しかったようです。
「湯宿の朝(塩原新湯)」という作品は、旅館の部屋から外の景色を見るという構図で、江戸時代の浮世絵では見たことがありますが川瀬巴水の作品としては珍しい気がします
野州佐久山岩井橋」は、橋の下を通して見える夕暮れの赤と、日陰に入った橋の黒のコントラストが良いです。
「箱根宮の下富士屋ホテル」。これは春夏秋冬の4連作ですが、なんとなく富士屋ホテルが箱庭っぽいです。これ、外国人観光客用のお土産になったりしたんでしょうね。


ということで、好きすぎて感想が長くなりすぎた川瀬巴水展でした。いや、好きだわ川瀬巴水。多分、全く同じ内容で展覧会があったとしても、またホイホイと行って、長文の感想を書いてしまいそうですわ。

なのでまた、巡回しませんかねぇ。2巡目かもしれませんけど(汗)。


おまけ:
日本橋高島屋のショーウィンドウが川瀬巴水展のディスプレイだったので全部撮ってきました。
左から順に一挙公開しましょう。
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