読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

月猫ツーリスト

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

藤田美術館の至宝@サントリー美術館

いきなり個人的なことから始まりますが*1、私の母は岡山県岡山市南区の妹尾地区(昔の都窪郡妹尾町)の出身です。で、妹尾町の南東、児島湾に近いところに藤田地区(昔の児島郡藤田村)があります。

藤田村のエリアに行くと道が整然と直線上になっていて、同じ干拓地とはいえ妹尾や妹尾の南の興除とは違うなぁと思うのですが、これは妹尾は(早いところは)鎌倉時代、興除が江戸時代に干拓されたのに対し、藤田は明治時代に大規模に干拓されたところだから、という違いがあるからなのですが、その明治の大規模干拓を指揮したのが藤田傳三郎。藤田財閥を率いて稼いだお金で、西洋化や廃仏毀釈などで顧みられなくなった文化財を買いあさった人物です。
そのコレクションにした文化財藤田美術館というかたちで保管されているのですが、藤田美術館は展示室が蔵の1階と2階しかないという狭さ、しかも蔵の展示室では気温や湿度の管理も難しいためか、夏と冬は休館してしまうという状況で、有名な収蔵品を一通り見るのにも何年もかかってしまう有様で。

そんな、中々見ることの出来ない藤田美術館の美術品を多数借り出しての展覧会がサントリー美術館で行われています。というわけで、滅多に見ることの出来ない作品を見に、サントリー美術館まで行ってきたわけです*2
f:id:Lunacat:20150822183447j:plain:w210



まず、展示は仏教関連の作品からスタートです。

[重文]快慶「地蔵菩薩立像」(10)
この仏像、やはり見所はその彩色の良さ。描かれている模様まで鮮明で、見ていて飽きません。すすで黒ずんだ様子もないので、どのように祀られていたのか、ちょっと気になります。
[国宝]大般若経(1)
今回展示されているのは1巻のみですが、藤田美術館には大般若経全600巻のうち、387巻があります。平成23年に奈良国立博物館で行われた特別展「天竺へ−三蔵法師3万キロの旅」ではその387巻がすべて展示されてましたが、凄いボリュームだったのを覚えています。
大宝積経(中尊寺経)(4)
1行おきに、金泥で書いた行と銀泥で書いた行が交互に。芸が細かいというか、手間をかけることがすなわち功徳を積むことだったのでしょうね。冒頭の金で描かれた仏様の世界も素晴らしいです。
[国宝]両部大経感得図(17)
ぱっと見は普通のやまと絵に見えて通過してしまいそうですが、作成年が1136年と特定できることから平安末期の絵画の指標として重要と、国宝に指定されている作品です。個人的にはこの作品は、藤田美術館学芸員さん(=藤田傳三郎のお孫さんかなんか、だったはず)が藤田美術館の展示室で熱く解説してたのを思い出してしまうのですが……。


続けて、国風文化に関連する作品が集められています。
このパート、本来なら国宝の紫式部日記絵詞を紹介したいところですが、後記のみの展示でしたので見ることが出来ませんでした。9月のお楽しみ、ですね。

[重文]法華経(扇面写経)(28)
切り箔が散らしてあって、なんとも綺麗です。また、描かれている4羽の鳥も、平安のものにしては写実的です。そんな写実を見ているうちに、古代ローマの壁画に似ているなぁと思えてきて……。自分でも、何でそう思ったのかは謎です……。
[国宝]玄奘三蔵絵(30)
これも1巻のみの展示ですが、実際には12巻そろいで藤田美術館は所蔵しています。これも平成23年に奈良国立博物館で行われた特別展「天竺へ−三蔵法師3万キロの旅」で全巻をまとめて展示していたのですが、あれは三蔵法師の追体験をしているみたいで楽しかったですねぇ。


下のフロアに降りて、吹き抜けの展示室では「天下の趣味人」という章になってます。要するに、その他、ノンセクションのコーナーです。

竹内栖鳳「大獅子図」(132)
過去の竹内栖鳳さんに関する展覧会でたびたび登場しているこのライオン、なんか久しぶりにお目にかかった気がします。今回はケースの都合もあってかなり近づいてみることが出来ましたが、これ、毛の描き方が一本一本描き分けていて、凄く細かいですわ。
円山応挙「蔦鴨図」(126)
応挙さんの描いた崖の横を飛ぶ鴨さん。正面向きの鴨さんの顔が可愛いなぁ……。


最古のコーナーは、茶道具の数々です。とくれば、当然この作品が来るわけです。

[国宝]曜変天目茶碗(72)
藤田美術館といえば、これ!、という人も多い曜変天目茶碗です。曜変天目茶碗は日本に数点現存するのみだそうで、私が見たことがあるのはこの藤田美術館のものと静嘉堂文庫美術館のもの(これも国宝)だけになります。あと、大徳寺にも国宝の曜変天目茶碗があるそうですが、これはたぶん見たことが無いと思います。国宝の天目は湯滴天目も含めてどれも良いですが、これは、そのミクロコスモスっぷりが素晴らしいですわ。
ちなみにこの曜変天目茶碗は今回の展覧会で最大の呼び物ですので、展示空間も中々趣向を凝らしてました。一つの茶碗にあれだけスペースを取るとは、中々やりますねぇ。
[重文]菊花天目茶碗(73)
この天目も、縦に流れた釉薬の跡が自然体なのが、なんか良かったです。


という感じで、今回わざと[国宝][重文]を表記しましたけど、本当に国宝、重文だらけで大変な展覧会でした。国宝、重文となると各地の展覧会に貸し出された際に見たことのある作品も多いのですが、そんな中でも印象に残っているものが多かったのも特徴でした。なんか旧友に再会して、やぁ久しぶり、って感じになる作品たちでしたよ。


この展覧会、9月2日からは後期展示になります。いくつか展示替えもあるようなので、別の旧友に会いにまた行きたいですわ。

*1:って、個人的でないことから駄文が始まったことは今までないような……

*2:と、なんでこんな長い枕を書いてしまったのか、自分でも謎です……