月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

琳派 京を彩る@京都国立博物館(後編)

昨日取り上げた京博の琳派展、今日はその感想の後編です。lunacat.yugiri.org


前回は宗達と宗達工房の展示のところまで紹介しましたが、続いてここからは光琳が登場します。

尾形光琳「夏草図屏風」(89)。光琳さんでも可憐な花を描くことが出来るんですねぇ(失礼)。右上から左下へ流れるように連なるのがおもしろいです。

尾形光琳「白楽天図屛風」(88)。波が荒くて無茶苦茶傾いている船に、涼しい顔して背筋を伸ばす白楽天。この人大酒飲みなのに、こんな時だけ涼しい顔とかずるいです。白楽天のことはともかく、この絵は舟の傾き具合とと絵的な波がすごいと思うのです。


そしてここでスペシャルコーナー。宗達の風神雷神図と、抱一の風神雷神図(宗達を模写したとも言われる光琳の夫人雷神図を模写したもの)と、抱一の夏秋草図で三役そろい踏みです。

この散策だとメインは宗達の風神雷神図になるわけで、一番かわいそうなのが抱一の風神雷神図。なんたって劣化コピーの模写ですから、そこは仕方が無いわけで。と言いますか、宗達の風神雷神図には勢いと愛嬌があると思いますです。
などと言いつつ、この3作品の中でどれが好きかと言えば、そこは断トツで抱一の夏秋草図屏風ですわ。やっぱこの風にあおられた秋草の可憐さに、感情移入しそうになりますわ。


1階に降りてきまして、流石に彫刻のフロアは仏像が巨大すぎてそのまま常設展のままでしたが、それ以外の部屋は特別展に使用されています。

光琳と抱一の三十六歌仙図を並べて展示してありました。抱一のは光琳のほぼ模写なんですが、人の表情に若干違いがあるような?この違いは時代の違いなんでしょうかね?

鈴木其一「三十六歌仙・檜図屛風」(74)。そして、ついに其一さんまで到達しました。其一さんの三十六歌仙図は抱一、光琳が描いたものを横長に再配置したような感じで、表情や仕草は同じです。ですが、流石に線に切れ味があるような気がするのが其一さんらしいところかと。

尾形光琳「竹虎図」(86)。ねこーねこー。ねこ可愛いな、ねこ(注:虎です)。


最後に、光琳以降の方をまとめたコーナーに移ります。

深江芦舟「蔦の細道図屛風」(152)。秋の蔦の細道という感じで、紅葉とか見えます。人物を後ろ姿で描いているのがおもしろい。

中村芳中「『光琳画譜』」(155)。中村芳中と言えば「たらし込みすぎの芳中さん」で有名ですが、光琳を紹介するために描いたものでさえたらし込みすぎで光琳とは似ても似つかなくなるのは……ええかげんにせえよ、芳中さん……

酒井抱一「四季草花下絵和歌巻」(161)。そして、光琳以降の真打ち登場。一人で宗達光悦ペアを実現してしまうのは抱一さん以外にはまねの出来ない技でしょう。銀が黒くなっているのが惜しいですが、よい雰囲気です。下絵が(鹿や鶴といった)動物ではなく、草花なのが抱一さんらしいかと。

酒井抱一「十二ヶ月花鳥図」(166)抱一さんが数多く作った十二ヶ月花鳥図ですが、三の丸尚蔵館のものを見るのは久しぶりです。6月のアジサイとトンボがよいですね。あと、10月も可愛い。

そして最後は、やっぱりこれでしょう。鈴木其一「夏秋渓流図屛風」(174)。根津美術館の所蔵するこの作品、ストロボですべてを止めたような描き方が好きですわ。しかし、宗達と比較して、琳派も遠いところまで来たものです、とも思うわけで……。


という感じで見てきた展覧会、やはり京都で開催しただけあって宗達、光琳を中心としたものになってましたが、個人的には琳派は「宗達最高、光琳まぁまぁ、抱一素晴らしい、其一さんその切れ味で私を刺して」なので(なんのこっちゃ)、江戸琳派がもうちょっと欲しいかなとも思ってしまいましたが……。ま、ここは京都ですから……。


おまけ:閉館の18時ちょっと前に外のに出てみると、すでに日が落ちていて。すっかり日が短くなりました。
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