月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

伊丹空港縮小の意味

2004年8月に案を出し,9月29日に正式発表された「大阪国際空港の今後の運用について」では,

  1. 2006年4月1日以降の3,4発機の就航禁止(事実上,B747の就航禁止を意味する)
  2. プロペラ枠の再拡大(プロペラ枠のうち50枠をジェットでもOKとしていたものを2007年4月1日までにプロペラ枠に戻す)
  3. 長距離路線の乗り入れ規制(努力事項)

の3点がうたわれ,伊丹空港の騒音対策を理由とした機能縮小が開始された.そして最近では,伊丹空港を第1種空港から第2種空港へ変更することが論議されているという.


国土交通省は伊丹空港の息の根を早期に止めてしまいたいと考えているようだが,これは一般には関西国際空港へのテコ入れ策と考えられいてるようだ.10月25日の財務省財政制度等審議会では関西国際空港の2本目の滑走路にはこれ以上の予算はつけられないという方針が出されており,関西国際空港を完成させたければ,どこかで予算を削る必要が出てきているのは確かである.
しかも,2005年度末には神戸空港の開港が予定されており,関西地区には3つの空港が役割分担も不明確なまま並立する状況となる.首都圏にも民間用空港が羽田と成田の2つしかないのに,人口で半分以下の関西地区に3つの空港があるのはおかしい,そう考える人も多いだろう.


そもそも関西国際空港は,本来は神戸空港を建設している場所に建設する予定だったのが,兵庫県や神戸市の了解を得られなかったために不便と工費増大を承知で泉州沖を高い金をかけて作ったのである.その後,兵庫県と神戸市は関西国際空港開業後に伊丹空港が廃止される可能性を考えて,また沈降著しい神戸の経済を箱物で回復するために神戸空港建設を開始したものである.よって本来,兵庫県と神戸市には,伊丹空港の縮小に賛成する理由こそあれ,反対する謂われはない.


しかし,国土交通省が伊丹空港の息の根を止めようとしているのは,関西国際空港の滑走路予算獲得だけが理由ではないように思われる.
まず,伊丹空港の問題点として,その飛行コースがある.羽田から伊丹行の飛行機に乗ると判るが,生駒山の南まで飛んだあと,北西に向きを変えて着陸するが,その際に京橋の近くや新大阪駅上空を通過する.先日,東京タワーの近くをジェット機が通過したことが問題となったが,大阪ではそのようなことは日常茶飯事と思って良い.本来,伊丹空港は安全性という点で問題がある空港なのである.
ところが,あと1年待てば,神戸空港が完成する.神戸空港は安全のため飛行経路としては海上のみを使う予定となっている(関連記事).安全のためにも,伊丹の機能を神戸に移転したいと考えても不思議はない.


ところで,神戸空港というのは本当に伊丹代替の用に足る空港なのか.まず,大阪からの所要時間は,大阪や京都からの時間は変化なしのようだ.難波からの時間もあまり変化がないようだが,梅田での乗り換えが増える分,分が悪い.
次に駐機スポットの数だが,ボーディングブリッジの数が4,増やしても6程度であり,伊丹の半分以下であり少し分が悪い.そして,航空機の便数であるが,1日60便の予定となっており,この便数だと羽田〜伊丹を移管するだけで満杯になってしまう.便数が増やせないのは伊丹や関空と同じ空域を利用するため,1時間に4本以上の航空便を設定できないため,というのもあるが,ターミナルの処理能力の問題もあるようである.これは,もともと兵庫県の空港として充分な量を元に建設したせいであるが,航空行政を国が真剣に考えてないことの現われでもある.


結局,国土交通省としては,伊丹の息の根を止めたいとは思っているものの,どうすれば止められるのか考え切れてないのかもしれない.私としては,

  • 神戸空港……羽田線,但馬線に特化
  • 伊丹空港……千歳線,福岡線,沖縄線,中部/中国/四国地方路線(プロペラ)に限定
  • 関西空港……上記以外の路線(国際線乗り継ぎを考慮)

といったあたりが落としどころのように感じているのだが,どうだろうか?