月猫ツーリスト雑記帳

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おん祭と春日信仰の美術

暮れも押し迫った12月30日,奈良国立博物館で「おん祭と春日信仰の美術」を見てきました.多くの博物館が12月27日で御用納めになってしまう中,大晦日までやっていることに敬意を表して見に行った,そんな感じです.

ところで春日大社は今でこそ神社ですが,昔は神仏習合の世界.なので春日権現曼荼羅というものが存在します.まあ要するに春日の山を中心にした春日大社の空撮掛け軸(をぃ)です.
それとは別に,春日大社の場合は春日鹿曼荼羅というものがあって,これは中心に鹿がどんと書いてある.確かに春日大社の鹿は神様の使いで象徴ですが,掛け軸の中央に鹿が大きく書かれている様は,今の動物写真に通じるものがあるな……などと,全く進行に結びつかない感想ばかりを考えております.

また,今回の展示で大きなスペースを取っていたのが,春日権現験記絵巻.11月に東京国立博物館で開催された皇室の名宝展第2期で長蛇の列をうみだした,あれです.もちろん,皇室の名宝展で展示されていたものがこんなに短期間に再度展示されるはずもなく,今回出品されていたのは江戸時代の写本です.その写本が,春日大社のもの,近衛家のもの,東博にあるものと3種類6巻が展示されていると,それなりに圧巻です.それにしても,春日大社の由来を書いた絵巻なのに,春日大社や藤原家には写本があって,本物は皇室経由三の丸尚蔵館というのは,何か間違っているような気もする世界です…….
そうそう,春日大社の写本は皇室の名宝展でも展示されていた第20巻が拡げてありまして,雪の降る山々の光景の場面が丁度展示されていました.この場面は,皇室の名宝展で見た三の丸尚蔵館蔵のものの方が迫力がありました.それ以外のシーンは,写本の方が色が鮮やかな分,良いものに見えたのに不思議です.


ということで,おん祭りが何なのか判っていなくても,春日権現験記絵巻を堪能するために見るだけでも楽しめる展覧会でした.