月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

諸国畸人伝@板橋区立美術館

板橋区立美術館は東京23区内にありますが、大手町から都営三田線で35分も西高島平駅から徒歩13分と、横浜美術館(東京駅から横浜駅までは25分、そこからみなとみらい線で5分ほど)に行くのよりもよっぽど気合いが居る立地なのです。しかもこの猛暑の中を歩きたくはないので尚更足が遠のいてしまって、暫くご無沙汰していました。


そんな板橋区立美術館で開催されている「諸国畸人伝」。江戸時代に活躍した個性派絵師、なんてもんじゃないな、我が道を突き進んだ画家を10人集めて展示してしまおうというものです。今回の展覧会、全くと言って良いほど、普段江戸絵画を見るときに常識と思っていることが通用しません。とりあえず、10人それぞれについて感想を書いてみましょうか……。

菅井梅関
ある意味ヘタウマと言えば良いのでしょうか?。輪郭線が太いので、なんか崩れた絵に見えますが、愛嬌があってよろしいです。
林十江
掛け軸いっぱいにトンボを描いたりと、お茶目な絵が多いです。トンボの目が可愛かったのが印象的
佐竹蓬平
今回、作品の解説板に一言を添えていた虎がいましたが、その虎の作者。虎は猫成分が多いです。
それ以上に、山水画が奇妙で空間が歪みきっています。多分、3つくらいの視点を1枚の絵の中に押し込んでいるのだと思いますが、ブラックホールに吸い込まれている途中の景色を描いたものと言われても信じます。
加藤信清
お経の文字で絵を描いてしまっている人。単眼鏡が必須です。遠目には淡い色彩の絵に見えるのですが……。
狩野一信
増上寺の五百羅漢図を作った方。今回展示されているのは100幅中3福だけですが、充分怖いです。
100幅一度に展示してしまう、来年春の展覧会(江戸東京博物館で開催)では、一体どんなことになってしまうのか……。考えるだけで恐ろしい……。
白隠
色白美人の観音様とか、楽しそうに徘徊するお坊さんとか、仙がいさんと同じく楽しそうなのが良いです。
曾我蕭白
群童遊戯図屏風の一点だけですが、子供の不気味さがやはり目立ちます。銀箔がもしも銀色に輝いていたら、どんなイメージになっていたのか……。きっと尚更怖さが引き立っていたように思えますが。
祇園井特
美人画なのに見たまま、有りのまま、綺麗じゃない人は綺麗じゃないように描いてしまう画家。実際はそうなんだろうなと思いますが、見慣れていないので怖い美人画に見えます。
中村芳中
細見美術館では有名な方ですが、今回は畸人としての登場なので、作品もそれを意識して……「たらしこみ」をやり過ぎた作品が展示されていますね……。ちょっと先入観をあたえる展示にも思えます。
絵金
直視不能。歌舞伎の場面を描いているとはいえ、血みどろの屏風は怖いです……。


えっと、展示されていた作品は数えてみたら47点ですが、お腹いっぱいになりました。一つ一つの作品の持つエネルギー量が半端でない上に、その作品のベクトルの向きがバラバラなもんですから……。
こんな絵師がいたということを紹介するという意味では、良くできた展覧会でした。とりあえず、中村芳中の例もありますので、これを機会にそれぞれの絵師について調べてみて、自分で人物像を作ってみようかと。大変そうだけど、頑張ってみます。