森美術館で開かれている「メタボリズムの未来都市展」、9月から開かれているというのに後回しにしていましたが会期末が1月15日と迫ってきたので、やっと行ってきたのでした。全く、会期末にならないと展覧会に足を運ばない癖は何とかしないといけませんね。
それはともかく、この展覧会は丹下健三や黒川紀章といった戦後を駆け抜けていった建築家が考えた「メタボリズム」による都市計画と、その実践としての建築物を見ていこうというものです。
「メタボリズム」というと昨今は「メタボ」、つまりお腹周りの話と思いがちですが、元の意味は「新陳代謝」、体内で食物がエネルギーに代わる科学的プロセスのことです*1。これを都市や建築に取り入れて、新陳代謝のように建物などが取り替え可能、必要に応じて細胞分裂するように建物を拡張できる余地をあらかじめ組み込もう、という発想が建築のメタボリズムのようです。
そんな思想が一番明確に現れているのが東京湾を皇居方面から木更津方面に斜め45度に埋め立てて新たな都心を築いてしまえという1960年の計画。2本のメインストリートの間の空間が基幹部分で、そこから必要に応じて外に枝を伸ばして住宅などを増やしていこうというもの。中央の建物も、割り箸でお城の模型を作るように長方形のパーツを組み立てていくような感じです。こちらも、パーツを追加していけば上に横に建物を拡張できるということです。
2本の道路の間の空間が基幹部分、ということで、思い出したのが空港の拡張。空港は4kmくらいある滑走路という物体があり、複数の滑走路を持つ場合は非発着制限を減らす為に、滑走路は平行に近づける必要があります。滑走路の間の空間を将来の拡張を考慮に入れてどうするか、というときに、この考えに近いことを考えているような気がします。
あと、メタボリズムの建築がいくつか紹介されていましたが、妙に納得したのが甲府駅の北にある山梨文化会館。文化会館などと言ってますが、新聞社とテレビ局の本社ビルです。このビルはいつ見ても(いや、見る度に変化しても困るけど)不思議と空間の多い建物だと思ってましたが、メタボリズムの思想に忠実に、メインとなる縦方向の柱に、横方向の長方形を取り付けて、というのをやっていたわけですね。この建物、実際に建物の増築をしたことがある、というのが思想の実現で凄いですわ。
ほんで最後の方にあったのが大阪の万国博覧会会場。この会場、万博の後は都市として使用できるようにライフラインの設計なども行われていたそうです。実際には公園になってしまったのですが、実際に都市というかニュータウンになっていたらどんな感じになったのか、想像するのも楽しいです。
いやそれにしても、情報量の多い展覧会でした。文字と模型を中心に見て、映像で紹介されていたものはパスしたのですが、それでも1時間以上。で、どう考えても映像で紹介されていた部分も見ておくべきだと思うので……。会期末が近いですけど、もう一度行った方がよいのかも……。
*1:手元のLDOCEで調べたら、そう英文で書いてあった