先日コンサートで仙台に行った、というのは前に書きましたが、そのついでで、仙台市博物館での法隆寺の企画展を覗いてきました。
今年は法隆寺に関する企画展が2つ巡回する予定になっているのですが、これはそのうちの、仙台→芸大→新潟と巡回するグループの方になります*1。
巡回先に東京藝術大学が入っていますが、この展覧会の企画自体も芸大がしていたのかもしれません。東京美術学校と法隆寺との関係や、法隆寺と近代美術など、他では余り見ることのない切り口での展示がありました。
それでは展示を見てみます。図録を見ると展示は3部構成のようですが、ここは仙台市博物館の展示順をベースに書いてみます。
法隆寺の創建と聖徳太子
まずは、外しちゃいけない聖徳太子です。かなりあっさりとした展示でしたが、少年期の太子像が2体来ているのが目立ってました。体型が子供で、髪もみずらですが、目の鋭さとか全体の雰囲気は僧形の菩薩像を思わせるものがありました。
また、大正時代に描かれた「聖霊会行列図」という聖徳太子の法要を描いたものがありましたが、とても細かくて、というか見えないくらいに細かくて凄かったです。
法隆寺と東京美術学校
早速、法隆寺と芸大の関わりに関するパートに入ります。まず最初は、大正や昭和の時代に行われた、法隆寺で大昔に使われた法具の復元品が展示されてました。古代の本物を見るときは色の落ち方や傷の付き方などに気を取られますが、復元品だと、それをどのように使ったのか、ということのほうがが気になるのが不思議です。
また、岡倉天心が調査した仏画などもありました。そのうちの一つ、14世紀に作られた「阿弥陀三尊像」の仏画は、三尊がすべて直立不動で立っているのが珍しい感じがします。痛みが激しいらしく、釣って展示できずにケースに敷いた状態だったのが、鑑賞する上では残念ですが、仕方がないです。
あとこのコーナーに、平櫛田中が彫刻をして前田青邨が着色した聖徳太子像がありましたが、これは以前に日本橋高島屋でやってた法隆寺展で見たことがあった気がします。
美と信仰−法隆寺の仏教美術(前)
もちろん復元だけではなく、古代から伝わる幡や仏具も展示されてました。この辺りのものは東博の法隆寺宝物館に行くとみられるので、ちょっと見るのに気合が入りませんね(贅沢)。
そんな中でも、7〜8世紀の「綾幡足残欠」は、元々の模様がかなりはっきりと残っていて、見応え充分でした。
法隆寺と近代美術
法隆寺と芸大の関わりに関するパート、その2です。法隆寺や聖徳太子に関わる近代絵画などが展示されてました。
安村行雲の「上宮皇子」は、淡い感じの彩色で描かれた作品で、聖徳太子の母親(穴穂部間人皇女)のおよーふくの模様が細かくて素敵でしたです。
中庭媛華の「夢殿桜」は、タイトルの通り夢殿と、その前に咲く桜を描いたものですが、夢殿って絵になるなぁとしみじみ思いますね(って、絵ですけど)。
金堂壁画の模写
法隆寺金堂壁画の模写といえば1940年頃の著名な日本画家が総出でやったもののイメージが有りますが、今回展示されていたのは秋田の僧侶である鈴木空如が昭和初期に模写したものでした。今までみた著名な日本画家が寄ってたかって模写したものと違って、メインとなる仏様がクリアで、また大きさや色の感じが分かりやすかったです。
美と信仰−法隆寺の仏教美術(後)
最後に、再び仏教美術に戻って。ここでは法隆寺の仏像が展示されます。
まずは飛鳥時代の菩薩立像。飛鳥の仏様らしく安定の安産型で可愛いです。
それから平安時代の薬師如来坐像は、とても優しい顔立ちで、ちょっと不二家のペコちゃんを彷彿させます(何を例に出しているのか)
そして最後に展示されていたのが、国宝の地蔵菩薩立像。これ3m以上あるんですかね。巨大な仏像です。顔が四角いのと、背中の綺麗さがチャームポイントかと。
という感じでの法隆寺展でした。なかなか近代との関わりでお寺の宝物を見ることはないので、そういう意味で良い展示だったと思います。法隆寺は東博の法隆寺宝物館で充分見てるよ、って人に特におすすめの展覧会だったと思います。
ちなみに、東京芸術大学への巡回は大型連休の頃ですので、東京の方はそちらで見るほうがよいでしょうね。
*1:もういっぽうは、福岡→静岡→岡崎と巡回予定