月猫ツーリスト雑記帳

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大原美術館展@静岡市美術館

静岡駅前にある静岡市美術館で開催中の、大原美術館展を見てきました。

大原美術館といえば、言わずと知れた日本最初の西洋美術館にして岡山倉敷の美の殿堂です。
その大原美術館、ある意味倉敷の観光を一手に担っていることもあってなかなか作品を大量に貸し出すことがないのですが、昨年の秋田県立近代美術館に続いての巡回でなんとも珍しいです。
まぁ、大原美術館には毎年2回程度は訪れてますので地方巡回を見る必要もないのですが、そこは大原美術館好きとして見ておくべきでしょう、というよく判らない思考回路のもと訪れたのです。


展示はまず、大原美術館のコレクションを最初期に選定した児島虎次郎に焦点を当てます。児島虎次郎好きとしては、これは嬉しい構成です。

児島虎次郎「姉妹」
ヨーロッパ留学中に描かれた、あちらの姉妹が机を挟んで向き合っている絵。こちらから顔が見える女の子の利発そうな感じが特徴でしょうか。ベルギー印象派っぽい飽和寸前の明るさが印象的です。
児島虎次郎「凝視」
これもヨーロッパ留学中のもので、こちらをギュッと見つめる瞳にドキリ。ちょっと筆の運び方がシダネル的かも。
エミール・クラウス「冬の果樹園」
ベルギー印象派のお師匠さま、来ました。冬は色温度が上がるのよね、とばかりに紫なども使っているのが印象派らしいと思ったり。
児島虎次郎「芝の上」
日本に戻って倉敷の高梁川の川岸に近い酒津で描いたものですが、酒津がベルギーに見える明るさだなぁと。
児島虎次郎「スウェーデンの少女」
これは3回目の訪欧の際の作品。なんかこの作品は湿気が見えるような気がします。


この先は、西洋絵画、日本絵画、民芸、現代美術が順に並んでいきます。西洋絵画だけではないんですよ、大原美術館は。

シニャック「オーヴェルシーの運河」
シニャックらしい、整然と四角いレンガを積んだような点描画。川面がまぶしいです、点描なのに。
この作品、アマン・ジャンが代理購入したのだとか。そういえば今回の展覧会、アマン・ジャンが来てませんでしたね。
土田麦僊「ヴェトゥイユ風景」
一瞬テンペラで?と思いますが、もちろんそんなことはなくて。画面の明るさに飲み込まれそうな気がします。
芹沢けい介「伊曽保物語屏風」
イソップを図案化した屏風ですが、この色は正倉院宝物にある染色の色のようです。
福田美蘭「モネの睡蓮」
福田美蘭さんが大原美術館の工芸館にあるモネの睡蓮を描いたもの。ですが、これは本当に描いているのは睡蓮ではなく水面なんでしょうな。
山口晃「倉敷金比羅図」
屏風に描かれるのは洛中洛外図屏風の瀬戸内版。瀬戸大橋の上に金毘羅さんの一の鳥居があったり、毎度ながら見ていて楽しい。


正直なところ大原美術館の名作中の名作は持ってきてない(グレコが無いのは当然として、アマン・ジャンもシャヴァンヌもセガンティーニもいないのだ)ので、この展覧会を見た静岡の方が大原美術館なんてこの程度と勘違いしてなければいいのだけと、と取り越し苦労をしてしまいますが、個人的には前半の児島虎次郎オンステージが久しぶりな作品も多くて実に良かったなぁと。後は、福田美蘭さんや山口晃さんなど、現代の作品も展示スペース的に見る機会が少ないので、まとめて見られたのは収穫です。

ま、ともかく、この展覧会を見た方は、ぜひともそのまま新幹線に3時間ほど乗って倉敷へどうぞ。本当の大原美術館の実力を見ていただきたいものです。