平塚市美術館で開かれている「リアルのゆくえ」を見てきました。
この展覧会は、明治以降の写実的絵画の歴史を通史的に眺めてみようというもの。高橋由一からホキ美術館的スーパーリアルまでという、こういう通史的な展覧会でないと一緒に見ることのない作品も多そうです。というか、スーパーリアリズム絵画を見るのは好きなのですよ。
とりあえず、気になった作品を適当に並べてみます。
- 横山松三郎「丁髷の男と外国人」(11)
- 展覧会の最初は横山松三郎から。この人は江戸城の記録写真を撮影したりもしていますが、この作品は写真と油絵を融合しているのが変わっています。絵画も写実なら写真も写実じゃろ?と言っているような。
- 高橋由一「鮭」(05)
- 日本一有名な新巻鮭。確かにそこにあるかのように見えるのですが、今の時代の目で見てしまうと、だから?と思わないでもなく……(をぃ)。
- 磯江毅「鮭-高橋由一へのオマージュ」(98)
- そんな鮭を現代に描いたら?というのがこの作品。時間が経ってますからね、少し食べたのね。
- 高橋由一「墨水桜花輝燿の景」(01)
- 普段は府中市美術館にいる由一の桜。こういう、遠景の手前を枝が横切る構図と言うのは、昔から憧れがあったんだなと。
- 田村宗立「幼童之図」(17)
- 明治時代の絵画にありがちな、リアルに描こうとしすぎて顔が怖く、かわいさが無くなる例ですね。
- 五姓田義松「井田磐楠像」(24)
- スカートも可愛い小さな子。とはいえタイトルからすると、たぶん男の子?
- 本多錦吉郎「羽衣天女」(27)
- 油絵で描いた日本神話。この天女さん、飛び方が西洋的な気もします。
- 原田直次郎「神父」(31)
- 暗闇の中、額や髭だけに光が当たってますが、この光の感じはジョルジュ・ド・ラ・トゥールっぽい気もするかなぁと。
- 岸田劉生「冬枯れの道路」(42)
- 大正時代は岸田劉生の時代なのだ、とばかりに岸田劉生が並びます。これは原宿付近の坂道だそうですが、当時は原宿付近も土の坂道なのですね。
- 宮脇晴「人形を持って立つ少女」(58)
- セーラーのワンピースの女の子が描かれています。とてもリアルで、今のスーパーリアルにも通じるものがありそうな。
- 筧忠治「ボニー」(74)
- 木炭で描かれた猫さんが、凛々しくて素敵ですわ。
- 長谷川燐次郎「猫」(78)
- 燐次郎と言えばの猫さん。何年もかけて描いたと言われますが、確かに毛の色が体の部位によって違ってますね。
- 上田薫「なま玉子C」(89)
- 展示の最後は現代のスーパーリアル的作品が並びます。これは有名な生卵ですが、君のところは窓ガラスの枠も映り込むほどのリアルさです。
- 犬塚勉「梅雨の晴れ間」(91)
- これは全く写真との差が判らない作品で、かなり近づいて凝視して、キャンバスの布目が見えて、ああこれ絵なんだと判るレベルで……。
- 吉村芳生「コスモス」(93)
- 画面一面のコスモスなんですが、これって色鉛筆で描いたんですか!
最近様々な展覧会で知られざる画家の特集を見るので、半分くらいの方は知っているのの、初めて見た気のする人も多かったです。特に、大正から昭和初期の画家さんは初めましての方が多くて……。勉強しなくちゃですね。
それと、やはり写実絵画は主流派ではなかったんだろうなと思うわけで、見たことのない作品も多かったです。そういう意味でも、結構勉強になった展覧会でした。
この展覧会、平塚では11日までですが、その後、碧南と姫路に巡回するそうです。