JR参宮線を廃止して1000台規模の駐車場を整備――。13年の伊勢神宮(三重県伊勢市)式年遷宮を前に、和菓子製造販売会社「赤福」会長の浜田益嗣(ますたね)・伊勢商工会議所会頭(70)が、予想される交通渋滞の緩和策として、こんな提案をしている。実現可能性は低いとみられるが、地元市議がJR東海の松本正之社長に「存続」を訴えるなど波紋が広がっている。
「参宮線廃止、駐車場に」 赤福会長、式年遷宮控え提案
朝から失笑してしまった記事です.一瞬,赤福の不買運動でもやろうかと思いましたが(笑),赤福氷は美味しいのでそれは止めることにします(爆).
この赤福会長の発言で問題なのは,参宮線の廃止よりも,駐車場を作れば渋滞が解消すると考える底の浅さです.道路の渋滞は,停止する必要のある箇所に,一定時間にその時間から流出する自動車よりも流入する自動車が存在することで発生します.従って,渋滞を解消するためには停止する必要のある箇所,つまり目的地の駐車場と交差点ですが,を減らすか処理能力を大きくするか,または自動車の絶対量を減らすか,これらの対策を組み合わせて行く必要があります.赤福会長の発言は駐車場を増やすと言うことで対策の一つではあるのですが,それで本当に渋滞が解消するのかというと,伊勢市の町の作りを考えるとかなり疑問と言わざるを得ません.
ここで伊勢神宮近郊の地図を見てみましょう.伊勢神宮は外宮と内宮に分かれていますが,外宮は市街地に近く,内宮はそこで道が行き止まりになる場所です.そしてその外宮と内宮の間に高速道路があって,名古屋方面と繋がっている,という状態で,渋滞しないのが不思議といっても良い道の作りです.
つまり,
- 大動脈の高速道路で伊勢西ICに到着すると
- 一般道路との交差点で信号に引っかかった後で
- 外宮に向かうと市街地で信号が多く渋滞する
- 外宮の近くの駐車場に止めた後,外宮に参拝して再び内宮に自動車で向かうと
- 途中に伊勢西ICがあるので混雑に巻き込まれ
- 内宮が近づくと内宮周辺はおかげ横町などのせいで観光客の滞在時間が長いので駐車場の容量が相対的に低下しており道路が混雑
となってしまい,構造的に混雑しやすい状況な訳です.ここで参宮線を駐車場にしても,内宮には遠いので,駐車場の処理能力に問題のある内宮には恩恵が無いのです.意味ないじゃん.ついでに,その駐車場に行く途中に外宮がありますので,市街地の渋滞は解消されないわけでして…….
ではどうするか.交通上のボトルネックは1番が行き止まりで駐車場拡張の余地が既に無い内宮周辺,2番が伊勢西IC周辺で交通が錯綜すること,でしょう.内宮なんて普段の日曜でも渋滞してますから,既に構造上の瑕疵といって良いレベルです.この2つを解消するには,
- 伊勢西ではなく伊勢IC周辺に巨大駐車場を整備する
- 現在,30分に1本程度の頻度で運転されている外宮←→宇治山田←→内宮のバスの運行頻度を休日は10分に1本程度まで高め,巨大駐車場を経由するように路線を変更する
- 観光用道路地図,高速道路上の看板などで,伊勢ICの巨大駐車場をアピールし,自動車を巨大駐車場に誘導する
といった対策を行うのが良いでしょう.要するに,外宮−伊勢西IC−内宮のラインに自動車を入れないことが肝要です.渋滞緩和のためには,総合的な対策が必要で,付け焼き刃な対策はさらに渋滞を拡大しかねないものだと思います.