月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

岡田美術館所蔵琳派名品展@日本橋三越

岡田美術館は2013年の秋に箱根に開館したばかりの美術館ですが、価値の高い収蔵品がたくさんあることもあって、昨今注目の美術館です。

なもんで、私もかねがね行ってみたいなと思ってはいたのですが、何しろ箱根ですし、展示の量が半端無いそうですし*1、入館料2800円ですし、ちょっと思い立っていくというわけには行かなくて、結局今まで一度も行ってないわけです。

そんな私に配慮してくれたのか*2、岡田美術館の方から都内に出張してきました。テーマは琳派で、出展点数は43点ほどと、国公立の大規模な特別展と比較すると少なめですが、琳派の展覧会を個人コレクションだけこの規模のものをやろうとすると、あとは細見美術館しか出来ないでしょうね。


そんな戯言は横において、展示を振り返ります。展示は概ね時代順になってました。


まずは琳派以前として、長谷川派の装飾的な作品からスタートです。

長谷川派「浮舟図屏風」
源氏物語の浮舟帖から、宇治川で船に乗る匂宮と浮舟。波の高さが不安感を煽ります(この場面で浮舟が身を投げるのだったかしら?)。その波の描き方が、長谷川等伯の描いた波に近いので、なるほど長谷川派だなぁと。
柳橋水車図屏風
長谷川派の十八番の一つ、宇治橋と水車の構図です。ですが、この絵は水車が控えめで、橋の方に比重があるようです。
伊年印「源氏物語図屏風」
右隻が澪標帖の住吉大社を描いたもの、左隻は宇治橋を牛車で渡っている場面なので、橋姫帖でしょうかねぇ。右隻の太鼓橋が極端なまでに太鼓橋なのが面白いです。そしてこの作品、恐ろしく保存状態が良くて、色落ちも剥落もないのがすごいです。
俵屋宗達本阿弥光悦「花卉に蝶摺絵新古今和歌集和歌巻」
金泥と銀泥で描かれている藤の花が好みの美しさでした。
俵屋宗達「烏図」
口を開け、足を曲げ、烏が跳ねている動きを感じる絵です。
尾形乾山「夕顔・楓図」
尾形乾山も絵を描いていたんですね。というか、たらし込みすぎな感じで、一瞬、中村芳中かと……
尾形光琳「雪中群禽図屏風」
岡田美術館創業者の岡田さんが、最初に収集した作品だそうです。鴨や雁が何種類化に描き分けられているので、一応実物見て描いたのかなぁと思いますが、全くの実物通りとも思えない不思議な鳥です。また松に積もる雪は風情がありますが、こうは積もらないだろうと思う装飾的な感じでした。
酒井抱一「檜に啄木鳥・紅梅に鴛鴦図」
時代もだいぶ近代に近づいて、江戸琳派にやって来ました。鳥の可愛さ、草の繊細さ、雪のちらし方、いづれをとっても抱一らしい絵になってます。
酒井抱一「桜図」
花の色は見えないかと思うほど淡くて、でも見えると桜の色はこれしかないと思えるわけで。
酒井抱一「月に秋草図屏風」
複数の色を用いて描いた秋草は抱一さんらしい細かさですが、単色で描かれたすすきの曲線は幾何学的で、何か軽やかな感じの作品になってます。
鈴木其一「名月に秋草図」
そして其一さん。この方の秋草は細かいを通りすぎて、既に写実の世界に足を突っ込んでます。そう、写実絵画はヨーロッパの専売特許じゃないのですよ。
速水御舟「桃梨交枝」
いよいよ近代になりまして、御舟さんです。可憐な花が印象深いです。


とりあえず自分の気に入った作品を駆け足で書き散らしました。琳派が好きというのもありますが、やはり展示されているもの状態がどれも良いので、なおさら引きつけられる作品が多かったように思います。やはりこれは、ちゃんと箱根まで行って岡田美術館で見てみないとだわ……。


おまけ:1階のライオンの入口のところで、風神雷神図屏風のデジタル復元が飾ってありましたのよ。
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*1:展示面積5000平米というのは、東博の本館よりは狭いが東洋館より広い、そんなサイズです

*2:んなわきゃーない