京都国立博物館の常設展示で「いぬづくし」という干支にちなんだ展示をしているというので、行ってみました。
中に入ると「いぬづくし」自体は2フロアだけで、犬づくしというほど犬だらけではなくて。
とはいえ、他のフロアにも良い作品がありましたので、フロアごとに感想を書いてみましょうか。
まず3階は、焼物と考古のフロアになります。いつもは見飛ばすことも多いのですが、ちゃんと見ると面白いものがありますね。
- 灰陶武人俑
- 中国の武人をかたどった焼物なんですが、この武人というかおじさん、親指立ててにこやかな表情で……。どう見ても府中や中山で馬券が当たった時の表情としか(をぃ)
- 古清水 色絵松竹梅文高杯
- 松の盆栽を描いたもの。色が薄くて若々しいのが珍しく思えます。
- 深鉢形土器
- そういう名前ではありませんが、これは火焔土器って言っても良さそうな造形。下の方は細身なのに対して、上の方はしっかりしていて、なるほど土の中に半分埋めて使ったのかなぁ、などと。
つづけて2階は、最初の2区画が「いぬづくし」のコーナーです。
- 犬追物図屏風
- 「猫追物」という競技がなくてよかったな〜というのが第一印象(笑)。競技よりも周りの観客が公家や高僧から庶民まで実に沢山なのに目がいきます。
ところで上の方に川がありますが、ということはここは鴨川の河原でしょうか?
- 長沢芦雪「狗子図」
- 子犬の背中に手をかける子犬とか……。芦雪の犬は卑怯だ(笑)
- 国井応文・望月玉泉「花卉鳥獣図巻」
- 「いぬづくし」ですから犬もいるわけですが、長毛の犬は今ひとつ可愛いとは思えなくて。それよりも犬の両隣にいる鳥とうさぎが良いじゃないですか。
中世絵画は「東福寺の画僧・明兆とその周辺」というタイトル。要するに禅画大特集になります。
- 明兆「白衣観音図」
- 作者とタイトルが同じ作品が何点も有りましたが、そのうち一番左にあった重要文化財のものです。肩肘ついたうつろな恰好が、物憂げで素敵ですわ。
近世絵画では「仙人」をテーマに展示してました。
- 鈴木松年「群仙図屏風」
- これは相当に濃い絵です。仙人で濃い絵と言えば曽我蕭白を思い出しますが、この絵は蕭白さんより線が太くて余白が無い感じで、その分ごちゃごちゃした印象です。
続いて中国絵画も「仙人」がテーマでして。
- 群仙図(仁和寺蔵)
- 山里にいらっしゃる仙人の皆さんが楽しそうで、これは仙人というよりも、御隠居さんの集いですなぁ。
やっと1階に下りてきました。実は京博はここが中間点です。
まずは仏像を眺めましょう。今まで中央にいた巨大な大日如来さまがいなくなって、ちょっと空間の圧力的なものが変わった気がします。
- 如意輪観音半跏像(廬山寺蔵)
- この観音様は実にやさしい顔をしていまして、恋に恋して照れている女の子の姿、と言っても通るのではないかと。
いや、足は太いのですが……
1階の奥の方の3つの部屋では特集展示「御所文化を受け継ぐ─近世・近代の有職研究─」をやってました。
- 二条城行幸図巻
- 御所から二条城に後水尾天皇が行幸した際の記録で、歩いている人の役割や人数などが丁寧に描かれています。こういうので、めったにないイベントを後世に伝えていくんですね。
- 諸殿調度図
- こちらは、部屋のどの位置に何を置くのかを記録している資料。壁や天井を取っ払って説明したり、置いたものの詳細図を付けたり、懇切丁寧ですわ。
- 銭形屏風
- この屏風、梅に桜に紅葉に雪に、と、四季ですね~。
- 五衣唐衣裳装束
- 十二単、来ました~。若草色で春っぽい。最近作られたものなので、裳に白から青へのグラデーションがあって、空から水へのグラデーションのようでした。
さて、これで残り2部屋となりました。まず金工の部屋では「梵音具」がテーマ。
- 銅鰐口(西教寺蔵)
- 部屋の中央に大きな銅鑼が。この大きさなら、音は良いでしょうな。
最後に漆器に行きましょう。今回のテーマは琉球の漆器です。
- 黒漆楼閣人物螺鈿食籠
- かなり大きなものなのですが螺鈿がびっしりと。かなり手間をかけてますね。
今回は各部屋で1つは気に入った作品を見つけようとしたので時間をかけて見ましたが(おかげで後の予定がかなりタイトになった)、じっくり見るとちゃんと気に入った作品が出てくるものですね。また機会があったら、同じように部屋ごとにじっくり見ていきたいと思います。
ま、とはいえ、今回の展示を総括すると芦雪の犬は卑怯ってことになるわけですが……。