月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

岩佐又兵衛・山中常盤物語絵巻@MOA美術館

熱海のMOA美術館では、この3月から6月にかけて、所蔵する岩佐又兵衛さんの12巻揃えの絵巻もの3種類を、それぞれ12巻全巻をまとめて公開、というのをやっています。
今回はそのトップバッターで、山中常盤物語絵巻全12巻を展示するというので、喜び勇んで行って来ました熱海まで、青春18きっぷで。

いや、熱海なんて100km程度だからと思って在来線の各駅停車で行ったわけですが、2時間くらいかかるのね。新幹線なら名古屋を通り越して、京都が近いくらいの時間でした。本当に時は金なりといいますか……。


山中常盤物語は、牛若丸が奥州に行ったのを聞いた母親の常盤御前が牛若丸を訪ねて旅をする途中、山中(関ヶ原付近)で盗賊に殺され、それを知った牛若丸が盗賊に対して仇討ちをするという物語。絵巻の中では、常盤御前が殺されるシーンと盗賊を仇討ちするシーンでの血の表現が目を引きます。というか、血を流しているカットが多いのです。
例えば、盗賊の一人が討たれて首と胴体が分離したカットが描かれていると、その次のカットでは、別の盗賊が胴体で真っ二つになって、更に先程首が分離した盗賊も描かれていると。一度死んだ人は、その場面が終わるまで何度もその位置で血を流しているわけで、その執拗な書き込み方が、岩佐さんの血のイメージを増幅するのだなぁと納得しました。

血の話以外では、やはりその色の鮮やかさと、細かく描きこまれた様が素晴らしいです。小袖の模様とか全て違ってますしね。繁栄する平泉での牛若丸を描いた場面がありましたが、鳥を調理する様子まで描かれていて、そんなところも楽しいです。


一方気になったのは、展示スペースの関係で、巻によっては端から端まですべてを展示できずに、一部カットになっていたことで、物によっては半分ほどしか展示できてない箇所もあったようです。そこはちょっと残念でした。臨時で展示ケースを部屋の中央などに入れられたら良かったのでしょうけど、それは贅沢かもしれません。
あと、巻物の右端の方に、巻いた時の癖というか皺が強く出ていたのが気になりました。早く修理してあげられるといいのですが。


と、血みどろの絵巻でこの感想も妙ですが、楽しめました、堪能しました。
山中常盤物語絵巻は4日までの展示ですが、その後、浄瑠璃物語絵巻が4月6日~5月9日、堀江物語絵巻が5月11日~6月5日と続きますので、楽しみです。あと2つの絵巻も見に行きますよ。