岩佐又兵衛というと去年夏の福井での展覧会が記憶に新しいところです。
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夏の福井の展覧会ではこれだけ集合することは無いかもと言った途端の大展覧会ですが、今回は源氏物語に関係する絵に絞っての展示です。
展覧会は6つの章に分かれていて、岩佐さん以前から以降までの源氏絵の流れを見渡すことの出来る展示となってました。
まず1章は、源氏絵の本流である、やまと絵から、土佐派の絵を見ていきます。
- 伝土佐光信「源氏物語画帖」
- 16世紀に作られたもので、玉蔓から蓬生までを展示していました。小振りなものの、発色が実によい。
- 土佐光吉「源氏物語画帖」
- 京博所蔵の17世紀のもの。こちらは若紫から須磨の場面が展示されています。全体的に典型的な場面を押さえているなという感じで、車争いの場面が生き生きしてますな。
2章で、いよいよ岩佐さん登場です。
- 岩佐又兵衛「源氏物語 野々宮図」
- 金谷屏風の一部である、野々宮図です。賢木で六条御息所のいる野宮を訪問する場面。結界の入口でこれから踏み越えようとする緊張感も感じられるような。
- 岩佐又兵衛「和漢故事説話図 須磨」
- 須磨の浦で嵐に遭遇する場面。木が風にしなる様子とか、心持ち不安そうな表情の源氏とか。結構岩佐さん、空間全体で心理状態を表現するのが上手いなと感じます。
3章では、源氏物語以外の岩佐さんの作品(といってもやまと絵の範囲で)を紹介します。
- 伝岩佐又兵衛「三十六歌仙・和漢故事説話図屏風」
- 上段にずらっと三十六歌仙の並ぶ様子は壮観です。で、その下には丸の中にいろいろな場面が描かれていて。これは絵合、これは那須与一と場面当てクイズをしながら見るのが楽しいかなと。
- 岩佐又兵衛「在原業平図」
- 在原業平のすらりとした立ち姿。普段三十六歌仙として描かれる時は座ってるわけで立ってる姿が珍しい。って、解説に書かれるまで珍しさに気づいてませんでしたが。それはともかく、衣の質感やグラデーションなど、丁寧な作品です。
続いて3つ目の展示室に入って第4章。ここでみんな大好きな、源氏物語の様々な場面を描いた源氏物語図屏風が登場です。
- 伝岩佐又兵衛「源氏物語図屏風」
- まずは大和文華館所蔵の源氏物語図屏風。若紫や澪標、絵合、女三宮と猫、という感じで実に名場面集だわ。
- 伝岩佐又兵衛「源氏物語図屏風」
- 続いてこれは高津古文化会館のもの。祝祭名場面集という感じで、桐壷の元服の場面、青海波、澪標、絵合、胡蝶と華やかな場面が続きます。
- 伝岩佐又兵衛「源氏物語図屏風」
- 作品名が代わり映えしませんが、これは京博所蔵のもの。19もの場面が描かれたものですが、全体的に多人数ですし、人々の顔立ちも風俗画っぽいです。なるほど、こうやって見ると洛中洛外図屏風の岩佐さんと繋がってるのを感じます。
5章は、この流れで来れば当然そう来るでしょう、54帖すべてを描いた源氏物語絵巻です。ここでは、住吉と岩佐、両方から1作品ずつを並べて比較してみようという趣向です。
と、並べた感じは、土佐光吉のものは昔から描くならこの場面と決まっているシーンを描くのに対して、岩佐勝友のほうは従者や周囲の人が多くて風俗画に近いですし、描かれるシーンもドラマチックなものが多いような。
最後に6章は、岩佐さんの源氏絵が浮世絵に対して与えた影響を見ていきます。
全体として、今までの源氏絵から一歩踏み込んで、印象的な場面をドラマチックに描くようになった岩佐さんの源氏絵、という流れが綺麗に見渡せる良い展覧会だったと思います。
にしても、「葵」で千尋の場面を描くのが、岩佐さんでメジャーになったというのは大きな発見でしたわ。