出光美術館での「江戸の狩野派」展を見てきました。
こちらの展覧会もタイムライン上で中々人気があったのですが、気がつけば15日の会期末まで時間が余りない状態になってしまって、あわてて行ってきたという次第です。
さて展覧会の方ですが、まず最初は「探幽の革新-優美・瀟洒なる絵画」と題して、狩野探幽に焦点を当てます。
狩野探幽というと空白を活かした水墨表現というイメージが個人的にはしていますが、今回の展示でも、(伝)狩野元信の「花鳥図屏風」と狩野探幽の「叭々鳥・小禽図屏風」を並べて展示してありまして、
並べて展示されると、元信の絵の室町っぽい感じと、探幽の絵の余白の白さが際立っておりました。こういう分かりやすい比較は良いですね。
続いて第2章は、「継承者たち-尚信という個性」ということで、狩野尚信にフィーチャーします。
継承者といっても尚信って探幽の弟だった気もしますが、このあとの江戸の狩野派は尚信の家系が継いでいくので問題ないのかもしれません。
ここは、いずれも狩野尚信の作品ですが、「猛虎図」「叭々鳥・猿猴図屏風」「双鷺図」と可愛い動物の絵が続いて楽しいなと。
「猛虎」と言いながら手元のメモは「猫可愛い」だとか、「双鷺図」も感想は「正面卑怯」だったりするわけで……何見てんだ、この人は?(汗)
第3章は「やまと絵への熱意-広がる探幽の画世界」。土佐派もびっくりの大和絵の世界が登場します。というか、狩野探幽も土佐派を学んでいたのですね。
ということで、探幽の「源氏物語 賢木・澪標図屏風」。後期は澪標の方が展示されていましたが、ストーリーを知っていると、右上に描かれている船上の明石の上の方に感情移入してしまいますね。大和絵はストーリーを知った上で見ないと楽しめないのが何点ですが、楽しいところでもあります。
第4章ではがらっと方向を変えて、「写生画と探幽縮図-写しとる喜び、とどまらぬ興味」。ここでは探幽が実際に写生したものと、粉本として写し取ったものが同居します。
中国の元の時代に描かれた「鶏図」がありましたが、非常にリアルに描かれた、立派なニワトリで。鳥って確かに恐竜の生き残りだなぁとか、(動物のお医者さんで)西根家最強の動物になるわけだと思う次第。こういうリアルに写実されたものを手本にしていくのであれば、粉本もそんなに悪くないと思うのですが。
ですが、狩野常信の「波濤水禽図屏風」を見ると、波が渦巻きすぎで模様と化してたりして。こうなると、実物をもっと見て来いと言いたくなりますね。まぁ、この絵については水鳥の後頭部が可愛かったので、良しとしてしまいますが(ゑ?)
最後は「京狩野 VS 江戸狩野-美の対比、どちらが好み?」ということで、東西狩野派の比較が始まります。いやこれは、今年の春に京博で山楽・山雪展を見てすっかり京狩野のシンパになった人には勝負にならないといいますか(笑)。
ということで、京狩野からは狩野永納の「遊鶴図屏風」が。永納は山雪の子ですが、この派手な感じが京狩野山雪の後継っぽいです。
江戸狩野からは、狩野安信の「松竹に群鶴図屏風」。ここで描かれているのは鶴ですが、こんな感じの鳳凰を、以前サントリー美術館で開かれた「鳳凰と獅子」展で見たことがあるな、などと思い出したり。ということは、要するに狩野派の描く鳥の標準形態だってことのようです。
あと、東博で見慣れている江戸城本丸の障壁画の下絵も展示されてました。
と、こんな感じで、江戸の狩野派というよりも狩野探幽に焦点を当てた展覧会でした。正直探幽ってまだ良さをつかめてない画家なのですが、これだけ活躍の幅が広いと、捉えどころが難しいよなぁと思うわけで。もうちょっと、勉強しないといけませんね。