月猫ツーリスト

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

山楽・山雪展@京都国立博物館

もう12日に終わった展覧会の感想を10日以上経過してから書くのも心苦しいのですが、この展覧会だけは感想を書かないで済ますわけには行かないので書きますよ。

というわけで、4月14日と5月12日の2度、京博の山楽・山雪展に行ってきたわけです。
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狩野派は天才狩野永徳が過労死(?)で若死したあとの代から、江戸幕府に使えた江戸狩野と京都に残った京狩野に別れますが、そのうちの京狩野の初代、狩野山楽と、二代目、狩野山雪にスポットを当てたこの展覧会、スポットの大半は山雪の方にあたってます。つまり、山楽は前座?(汗)


いや、山楽もすごい絵でして、狩野永徳の画風を一番受け継いでいるのは山楽じゃないかと思う豪快な柄が目立ちました。例えば妙心寺の「龍虎図屏風」の虎さんは日本には珍しい猫化してない虎(をぃ)ですし、どこか狩野永徳の「唐獅子図屏風」の獅子の足を思わせるところがあります。

あと、「車争図屏風」源氏物語の葵帖で出てくる、葵の上と六条御息所の車争いの様子を描いたものですが、この場面をこんなにイキイキとした群衆表現で描いた作品は他にないのではないかと。この辺りは、洛中洛外図屏風が大量に描かれた時期だからこそ、なのかもしれません。



と、山楽だけでも充分に大規模展覧会ができると思われるのに第3室までで終わりにして、第4室からはいよいよ山雪です。
山雪は一言で言うと、江戸時代の京都画壇の祖なのではないかと。その絵の中には若冲的なものも蕭白的なものも応挙的なものも感じられる、18世紀後半を一人で150年前に先取りしているような感じなのです。

例えば(これは山楽との共作となっていますが)天球院の「朝顔図襖」。朝顔の瑞々しさと直線を基調とした垣根の整然とした感じが、鈴木其一さんを思い出させたりして(って、いきなり京都繋がりじゃない)。なんとも時代は桃山から江戸に変わった、と思う作品でした。


中央室と第6室で、最も長い行列に囲まれていた、チェスター・ビューティー・ライブラリーの「長恨歌図巻」。この絵巻はほんとうに綺麗でねぇ、とても細かくてねぇ、題材は異なりますが、若冲の「動植綵絵」と同様に裏彩色や高価な顔料とか、とにかく手間もお金もかけてますって感じの作品です。リンク先で一部ですが拡大画像が見られますので、ちょっと確認してみましょうよ。
ところて、これを見て、初めて長恨歌の粗筋がちゃんとわかりました、ということは内緒でお願いします(こら)


一方、かわいいの系譜からは根津美術館の「松梟竹鶏図」。いちご頭のフクロウさんがなんとも可愛くってねぇ。
それから佐賀県立博物館の「竜虎図」は、虎が龍のほうを水を飲んでるんだから邪魔すんなという目で見ているのが楽しいです。全く戦う気ねーな、この虎。


「春冬山水図」という水墨山水な二幅の掛軸。遠近感の表現がとても良くて、日本画は平面だけじゃないんだぜと欧州の方々に自慢したくなるレベルでした(なんのこっちゃ)


京博蔵の「洛外図屏風」は金屏風に描かれた山水画ですが、京都の風景で山水画にしてしまう構図が上手いなと。こうやって見ると大堰川が大河に見えるから不思議です(汗)。


そして最後の第10室……。ここが本当に凄かった。なってったって、この部屋自体が「第6章 極みの山雪ワールド」という名称なわけで、今までさんざん度肝を抜いてきた作品群を前座扱いしてしまう真打ち登場なわけです。

で、部屋にはいると最初に出迎えるのが真如堂「寒山拾得図」なのですが……。本気で蕭白ショックに紛れ込んだかと思いましたが……(汗)。

とりあえず、この部屋の中でも特に良かったのが、「蘭亭曲水図屏風」(随心院)と「雪汀水禽図屏風」でしょう。


「蘭亭曲水図屏風」は、八曲二双とという超横長の屏風ですが、蘭亭序の舞台となった曲水の宴の様子を描いたものです。いや、登場する人物が皆さん楽しいそうでねぇ。真剣に詩を読もうとしている人、それよりもお酒を飲むのを優先している人、いずれも良い表情です。最下流には子供が誰も手を付けなかった杯を回収しているのですが、ちゃっかりお酒を飲んじゃってる子もいて、いやいや楽しそうだわ。


「雪汀水禽図屏風」は、山下裕二先生曰く津軽海峡冬景色とのことでして、確かに雪の中で凍えそうな鴎がおりますが……。

それは置いておいて、とにかく波の表現がいいですね。これ、実際にみてみると立体的なんです。日本画なのに油絵のような立体感がすごいですよ。
それから、左隻の雁行する千鳥の列。この構図を見ると思い出すのが光悦・宗達ペアの「鶴下絵和歌巻」。宗達が金泥だけで描いたものを岩絵具で描くとこんな感じなんでしょうかねぇ。1羽づつ、頭の角度、翼の角度が微妙に違って、本当に手が込んでるし、描いているときは楽しかったんじゃないかしら?という感じです。



いや、それにしてもすごい展覧会でした。現時点、21世紀ナンバーワンの展覧会と言って良いのではないかしら?(って、気が早すぎますって)