京博で開かれた、「桃山時代の狩野派」展を見てきました。
この展覧会、宣伝では2007年に開かれた狩野永徳展の続きという扱いになってまして、正直どれだけの人が2007年の展覧会を覚えているのだろうかとか、2年前の狩野山楽・山雪展は何処行ったんだとか突っ込みたい点はありますが、とにかく今回の展覧会は狩野永徳から探幽までの時代の狩野派を通しで見てみようというものです。
正直言いまして、その時期は狩野派が一番輝いていた時期ともいえるわけで……。なんか色々と凄いものを見ることができそうです。
以下、毎度の通り気に入った作品をずらっと書き出してみます。
- 02狩野宗秀「柳図屏風」
- 一本の巨大な柳が中央に。風の向きと木の曲がってる方向が逆で、風に耐えてる感を増量している。
- 04狩野山楽「槇に白鷺図屏風」
- 正面を向いている鷺が目が大きくて可愛いのが個人的な萌えスポット。あと、この白色は多分高い顔料なんでしょうなぁ。
- 06州信印「四季花鳥図屏風」
- 細い線で丹念に描かれていて、かなり好み。鳥の胸の毛のグラデーションが結構凝ってるます。
- 11「源氏物語図屏風」
- 面長ですが、岩佐さんとは違う感じの面長。場面は判りやすいのを選んでる感じだし、描かれているのも桐壷から野分まで(かつ、須磨・明石を除く)と光源氏が頂点を迎えるところで終わっていて、幸せな場面を描くように注文主からあったのかなぁと。
- 17狩野山楽「山水図襖」
- 空間のとりかたとか、右手前にある松とか、定規を当てて描いた建物とか、構図が最高です。
- 18狩野光信「豊臣秀吉像」
- 巨大な絵に巨大な体。でも手は小さくて。手が小さめなのは光信の特徴だとか。
- 31「洛中洛外図屏風」(富山・勝興寺蔵)
- 方広寺、御所、二条城が横一列に描かれるBパターンの洛中洛外図。建物の直線が定規を使って描いているのもあって目立ちます。あと、山鉾がひときわ高いなぁ。
- 29「吉野花見図屏風」
- 細見美術館所蔵のもの。左下から右上に、桜も人も駆け上がる躍動感。
- 37「調馬・厩馬図屏風」
- 厩に馬が並ぶと、オートバイ馬じゃないのかと……(山口晃さんの見すぎです)
- 42狩野孝信「唐船・南蛮船図屏風」
- 九博で何度か見かけたことのある南蛮屏風。色の濃さが目を引きます。左隻は中国の様子を描いたものですが孝信ではない人が描いたと推測されているそうで、確かに屋根の線の間隔が広くて、直線が大味だなあと。
- 67狩野探幽「松に孔雀図壁貼付・襖」
- 二条城に描かれた松。充分に豪快なのですが、解説によると、永徳の頃の画面からはみ出す勢いはないよね、と。確かに。よく見ると、松の針金のような葉も描かれていて、豪快よりも繊細の作品なんだなと。
- 69狩野探幽「柳鷺図戸襖」
- こちらは名古屋城の襖絵。ということは空襲の際に持ち出したものでしょうか。尾の長い鳥だけが描かれた襖があって、軽やかなのが印象的。
- 狩野探幽「八尾狐図」
- 大作が続いた後に、最後にほんわかとする絵が出てきましたが、家光の夢に現れたという狐を描いたものです。尾が八本ありますが、何しろ将軍家光の病気を治すようなおキツネさまですので、霊力もあるのです。にしても、このキツネ可愛いな。
江戸時代の狩野派は線の細い、永徳とは似ても似つかない画風になっていきますが、こうやって永徳から探幽までの流れを見ていくと、豪快から繊細へという流れも必然だったように思えますね。
にしても、それほど得意でない狩野派で、これだけ気に入った作品を出してくるとは、毎度のことながら京博恐るべし、です。