月猫ツーリスト雑記帳

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松園と華麗なる女性画家たち@山種美術館

山種美術館で行われている展覧会「松園と華麗なる女性画家たち」を見てきました。
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山種美術館は今住んでいる江戸川区からだと遠いイメージがあって(実際は遠いというよりも日比谷線が遅すぎるのです)ついつい行くのが億劫になるのですが、今回もそんな感じで会期末が迫っているのを見て慌てて行ったような次第です。


今回の展覧会は、上村松園を中心に、明治以降の女性画家の作品を集めて展示しようというものです。しかしそれをするには山種の収蔵品だけでは偏りが出てしまうので、近くにある実践女子大学香雪記念資料館から作品を大量に借りての展示となっています。というか、山種と実践女子大との共同企画と言っても良いような構成になっていました。


そうは言ってもここは山種、展示は山種美術館の持つ上村松園作品全点一挙公開から始まるのです。

上村松園「新蛍」
展示の一番最初はこの作品から。図録の印刷だとわかりにくいですが、手に持っている団扇は金粉での彩色です。それにしてもこの絵、蛍一匹が飛んでいるだけで、これだけの風情が出るのですから恐るべしです。
上村松園「蛍」
「新蛍」の前に描かれた蛍の作品。当然ですが、描いたのは若い頃(といっても30代)です。植村さんの場合若いときの作品は、目や額の生え際の描き方がちょっと朦朧体というか靄のある感じになっていて、そのせいもあって女性が若い顔に見えるのです。私はこの描き方のほうが好きですね。
そうやって見ると、山種の収蔵する松園の作品は昭和10年代、60代の作品が多いようです。山種種二さんが集め出したのがその頃なんでしょうかね。
野口小蘋「春山僲隠図」
野口小蘋は松園以外の女性で唯一、帝室技芸員に選ばれた方です。それも明治時代に。なので相当の議行がある方です。この方の作品が大量に実践女子大から借りて展示されていました。
この作品は山間の桃源郷晴耕雨読の生活をしている一軒家、という感じの絵ですが、靄に煙る遠景の山や、桃かしら?の花をつけた木の丹念なきれいさが良いです。
野口小蘋「芙蓉夏鴨」
芙蓉の花を中心とした夏草と、雌雄の鴨を描いた作品。構図などは江戸絵画っぽさもありますが、夏草の向きが不揃いだったり葉が斑入りだったりするあたりは写実的でもあって、ちょうど江戸と近代の端境を感じます。
野口小蘋「箱根真景図」
元箱根から芦ノ湖全体を描いた屏風ですが、芦ノ湖を中心としているせいか箱根が瀟湘八景のように見えますね。中央にある富士の白峰が良いアクセントになってます。
河邊青蘭「態濃意遠図」
ここからは、様々な女性画家の作品をおおむね時代順に紹介していきます。まずこちらは、春夏秋冬の花が咲く庭の中に、中国風の女性が沢山遊んでいるという図で。各女性は豆粒大の大きさなんですが、どの人も楽しそうなのが良いですわ。
河鍋暁翠「紫式部図」
こちら、河鍋暁斎の娘さんです。といって見るせいか、何となく絵の感じも暁斎に似ている気もします。
池田蕉園「春流」
お、池田蕉園さんが来ました。この方、夢見る少女の顔が良いのですよ。
池田蕉園は30代で結核にかかって亡くなってしまったせいで今ではすっかり忘れられた画家ですが、もっと長生きしていたら上村松園と同じくらいの名声はあったんじゃないかと思うのです。
伊藤小坡「花下遊宴之図」
お花見の様子ですが、実に桜がきれい。踊っている女性はS字曲線だったり、桜の幹はたらし込みだったりと、伝統も踏まえつつの綺麗さです。


第2展示室の方では、同時期のおっさんども、もとい、男性画家の作品を並べてありました。もちろん同時期の男性画家、では対象が多すぎますので、帝室技芸員に選ばれた人、という縛りになってました。

川合玉堂「朝晴」
これ、切り立った崖の上の凄い尾根道だなぁ。なのに牧歌的なのが玉堂さんらしい気もします。
竹内栖鳳潮来小暑
栖鳳さんは晩年は本当に緩い作品が多くて……。
今尾景年「松月桜花」
月明かりが墨の濃淡だけで表現されています。そんな中、唯一色の付いている桜が何かはかなげで。

こうやって見ると、普段見かけない作品が多かったせいもあるのか、上村松園以外の女性作家に良い作品が多かった気がします。是非今後も、ほかの美術館や大学とコラボした展覧会をやっていただけると、知らない作品に出会える機会も増えるので嬉しいのですが……。


おまけ:今回の展覧会の和菓子。
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これは池田蕉園の「春流」がモチーフとか。