月猫ツーリスト雑記帳

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九州国立博物館開館10周年記念「美の国日本」@九州国立博物館

九州国立博物館は今年で開館10周年となります。元々国立博物館は戦前の帝室博物館からの伝統を持つ東京、京都、奈良の3館のみで運営されていましたが、そこに新たに作られたのが、アジアの中の日本という立ち位置で日本の歴史を美術を考える九州国立博物館です。
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その、10年前の開館記念特別展「美の国日本」は国立博物館を待ちわびていた九州の人を中心に40万人を動員しました。その展覧会は私も見に行っていて、そのときの感想(というかダメ出し)も書いていました。lunacat.yugiri.org

それから10年たって、10周年記念の特別展は開館記念特別展と同じ名前をかぶせた「美の国日本」の名前となりました。
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前回はいろいろダメ出しをしましたが、今回はどんな感じなんでしょうか。



展覧会は3部構成で、まず第1部は「原始日本列島の造形美」と題して、縄文から古墳時代のものが登場します。
(注:以下、一部の作品に添付の写真は東博の常設展示で展示されているときに撮影したものです。特別展では撮影禁止です)

トップバッターは亀ヶ岡の遮光式土偶さん。

やっぱり可愛いです、この子。

そして、火焔式土器と、火焔式土器と同時期に長野で作成された水煙文土器も展示されていました。水煙文土器は○と曲線が連なる模様で、抽象性が高いのが特徴でした。

神戸市立博物館に展示されている国宝の銅鐸。銅鐸よりも、その横にあった3Dプリントされた複製品が手に取ることOKだったのが良かったですね。銅鐸って結構薄いのね。

それから埴輪も各種並んでいて、彼も来ていました。

トーハクくんがキューハクに来ただほ(汗)。


続けて第2部は「美の画期」と題して、日本仏教の黎明期である飛鳥〜奈良時代、和洋の確立する平安時代、そしてそれに続く鎌倉時代を取り上げます。その流れの主軸は仏教、というか、60作品中45作品くらいが仏教だったような。「美の国日本」ではなく「美の仏教国日本」と言わんばかりです。

最初に、日本仏教美術の源流となる、唐と百済の文物が。それも中国の一級文物、韓国国宝です。
百済の王冠の飾りは多分この時代の最先端最高級なのでしょう。とても手が込んでました。


そして、東博に普段はある法隆寺献納宝物が沢山やってきてました。このコーナー、前期は正倉院宝物だったのですが、それと比べるとネームバリューは衰えます。ですが、正倉院宝物よりも100年以上前のものを見ることが出来るのですし、仏教の黎明期、というコーナーのテーマには法隆寺のほうがあってる気がします。

まずは観音菩薩立像(法隆寺献納宝物No179)。幼児体型来たわ〜。かわいいわ〜(って、それは仏様の感想として正しいのか?)

摩耶夫人の像もありました。

東博で展示するときは写真のように同じ平面上に夫人と天人を並べていますが、今回は天人は段差を付けて展示してあって、こっちの方が雰囲気が出ますね。

竜の首の水瓶も。

水の出るところが動物なのは、ペルシャの影響だとか。

阿弥陀三尊および僧形像」は板金の押出仏。脇侍が長身で色気すらあるのが好きになりました。


第2展示室に移って、ここから平安時代に入ります。
最澄の筆になる国宝の「久隔帖」。これ、行の先頭が斜めっているし、後ろのほうは詰まっているしで。なんか残ってしまったから国宝になってますが、最澄本人としては勘弁してくれって気持ちじゃないでしょうか?

続けて奈良博が所蔵する国宝の「十一面観音像」の絵は、肌のピンク色も未だ残ってなまめかしい。

平等院鳳凰堂の飛天も来ていました。楽器を持って演奏中の姿、平安時代の仏様は優雅です。


そして鎌倉時代へ。
藤田美術館玄奘三蔵絵、その一番最後の巻が来ていました。やっぱりこれ、色とか素晴らしいですわ。


最後の第3部は、「琉球の美、アイヌの美」ということで、沖縄と北海道に参ります。

ですが、琉球と言えば室町以降ですし、アイヌは江戸時代以降が中心ですが、その手前の第二部まででは鎌倉時代までしか扱ってない。つまり日本美術と琉球アイヌの美術が繋がらないのです。『「琉球の美」と「アイヌの美」を日本列島の美術の歴史として広域的な視野から見つめることによって』と言われても、同時代の(従来の)日本美術との比較という補助線はあった方が良いんじゃないかとおもうのですが。

とりあえず、琉球の金の簪は、素晴らしいですね。それにしても重そうです。


ということで「美の国日本」は展示的には「美の仏教国日本」で仏教美術ばかりですし、鎌倉時代で終わってしまって室町以降はどうしたと言いたくなるわけで。室町以降は美ではない、と言うわけでもないでしょうが……。
まぁその、九博の特別展示室は東博の半分程度の広さなので、全部を網羅できないのは理解できます。が、それこそ前期と後期に分けて総入れ替えにしてすべての時代を扱っても良かったんじゃないかなぁと思うのですよ。

そして更には、九博のミッションの一つである、東アジアとの繋がりの部分があまり見えてこなかったのも、残念でしたね。この点は、10年前の「美の国日本」のほうがちゃんとしていた(ちゃんとしすぎていて日本人置いてきぼり、と言う話もありますが)ように思えます。


あ、今回もダメ出しになってしまった……(汗)