久しぶりに山種美術館へ行ってきました。
今回は「日本画の教科書~京都編」という大げさなタイトルがついてますが、要するに山種美術館コレクションのうち、京都画壇の方の作品を集めたものになります。
京都といえば、竹内栖鳳さんに始まって、その弟子に上村三代とか小野竹喬さんとかいて、緩いように見えて写実的な生き物を描いた作品が沢山あるのではないかと期待して見ていきましょう。
ということで、入口を入って最初に目に入るのは、京都画壇と言えばこの人でしょうという、竹内栖鳳の「班猫」。いつみても十分に重要文化財の風格のある猫さんです。
この猫さん、近寄ってみると、黒い毛と白い毛を両方描いて表現していて、まるで本当の猫のような。それから、実はどの角度から見ても目があう野に気づいて、いろんな方向から見て楽しんでおりました。
今尾景年の「松月桜花」。月明かりの荒々しい松。松の幹から山桜に見えるけどそうじゃない。
竹内栖鳳の「鴨雛」。アヒルさんがラブリーなんですが、何度見ても雛の足の向きがこれでいいのかな、伸びすぎてないかなと、そういう点が気になります。
もう一つ竹内栖鳳さんの「憩える車」。水車に止まって寝てる鷺さんが可愛らしくてなんとなく、わかつきめぐみさんの漫画に出てきそうな気がしたりして。水車を大写しにしているのが、空間的に良くなってる気がします。
冨田溪仙「嵐山の春」は、雪の中のイタチさん?を描いたもの。生き物が実に写実的。
そしてシロクマと言えばこの人。西村五雲の「白熊」。立派なシロクマでねぇ、このシロクマは京都市動物園にいたそうですので、一度は行ってみないとと思っているのです。隣の京都市美術館までは良く行くんですけどねぇ。
と、やはり「日本画動物園」といった感じの鑑賞になってきましたが、ここで上村松園さんが登場します。
松園さんの「牡丹雪」は、今回特別に写真撮影が可能でした。
うん、細部まで細かく、かっちりとしてますなぁ。
村上華岳の「裸婦図」。これも重要文化財。タイトルこそ裸婦ですが、どちらかと言うと仏画のような印象です。
小野竹喬「晨朝」。竹喬さんは、単純に塗り絵をしているように見えて、結構丁寧だと思うのです。
山元春挙「火口の水」は、旧火口の底に立って周りを見ているという構図。もやとか水の輝きとか、明るい幽玄という印象を感じます。
再び小野竹喬さんで「沖の灯」。夕焼けの茜色と、沖のいさりび。夕方から夜に向かう、このグラデーションも深いです。
福田平八郎「芥子花」。ぱっと見、縦の棒が数本立っているだけの絵にも見えますが。平八郎さん、色に注目して形を単純化したら切り絵のようになってしまったという感じ。
ここからは、上村家の3人が続きます。といっても花鳥画好きなので松園さんは飛ばして。
まずは2代目、上村松篁さんの「春鳩」。可愛らしい鳩、とだけ思ってしまいますが、可愛らしさの中にも雄蕊とか羽の模様とか、結構ポイントは描きこんでいますね。
もう一つ、上村松篁さんから「白孔雀」。体よりも相当に大きな羽が、吸い込まれそうな淡さで。胡粉の白が美しいです。
そして3代目、上村淳之さんの「白い雁」。この人も、装飾的なように見えて、結構羽などの鳥らしい部分には拘ります。
つづいて小部屋の方にも行ってみましょう。
まず、ガラスケースの中にあったのは福田平八郎の怪しい牡丹(作品名は「牡丹」だけです)。ピンクは何色あるのか?と思うほどの、ピンクの花の色の変わり方ですよね。すごい。
山口華楊の「木精」。森の妖精さん(ミミズクです)と、老木の生命力に引き込まれる感じ。
そして最後に、山口華楊さんの「生」この牛さん、つぶらな瞳に吸い込まれそうですが、この作品も、どこから見ても目が合うきがします。
ということで、「日本画の教科書~京都編」ではなく、「日本画の教科書~動物編」だったかのようなテンションで動物を愛でてしまいましたが……。
やはり京都は円山四条派からの伝統なのか、生き物が生き生きしていて良いですわ。