現在、東京都美術館では「伝説の洋画家たち」という大層なタイトルをつけて、二科展の100周年を記念する展覧会が開かれています。
この手の展覧会としては、2014年の初めに「世紀の日本画」と題して院展の100周年を記念する展覧会が有りましたが、ちょうどそれの洋画版と言ったところです。そういえばタイトルが無駄に大げさなのも良く似ていますね……。
そもそも私は公募展は殆ど行きませんし、行ったところでナイトチケットで安くなる時間に30分で眺めるような人ですので、二科展と言っても興味が無いんですよね。しかもパンフレットを見ると関根正二や小出楢重、佐伯祐三といった苦手ネームが並ぶわけで……。
そんな理由でこの展覧会は無視しようかとも思っていたのですが、なぜだか見に行った人の評価が割合高かったので、騙されたと思って行ってみたわけです。
この展覧会、展示はだいたい時代順に並んでいます。というか、展示作品は全て二科展で展示されたもの、という縛りをかけているので、どの回の二科展で展示されたかを元に章立てをされているのでした。
ということで第1章は草創期。1914年から1919年の二科展で展示されたものです。
- 坂本繁二郎「海岸の牛」(2)
- 坂本繁二郎は久留米出身の方なので石橋美術館で沢山見た気がしますが、動物というか馬の絵を沢山描いているイメージの方です。この作品は、夕焼けで逆光の中を牛が立っていて、牛なのに神々しさもあります。そして、印象派のようにも見える淡い色彩が好みで良いですわ。。
- 山下新太郎「端午」(9)
- これは良い幼児。バックの春光とか、色の濃淡で表現しているカーテンのひだも良いですね。
- 鍋井克之「秋(正倉院の池)」(26)
- 奈良の大仏池を点描で描いているのですが、圧倒的に水蒸気が無い、ヨーロッパしてる
- 梅原龍三郎「読書」(参考出品)
- 作品リストには載ってないので、直前になってから展示が決まったんでしょうかね。ルノアール的に女性を描かせると、流石ですわねこの方。なんか、質感がとても良いのですよ。
続けて第2章は揺籃期。1920年から1933年の作品です。第2章とはいうものの、この章の展示が3フロアに分かれている都美の1フロア以上にわたってありましたから、実質的にこの章がメインなんだと思います。
- 古賀春江「二階より」(41)
- 2階の障子をあけると窓いっぱいの三角屋根、とう景色が描かれているのですが。きっとこれは、三角を描きたかったんでしょうね。
- 中原實「モジリアニの美しき家婦」(44)
- 清楚なイメージの女性なんだけど、なんか平面の国に入ってしまったという風にも見えて。そんなところも含めてのモディリアーニなのかもしれませんけど。
- 東郷青児「ピエロ」(69)
- ある意味、アールデコの頃のポスターのようです。ポーラースターのポスターとか良いよね(すでに東郷青児関係ない)
- 古賀春江「素朴な月夜」(75)
- 再び春ちゃん来ました。全体的にコラージュですけど、構図的には縦に真っ二つなのかしら?。右下の狛犬(ちがいます)が可愛いです。
- 坂本繁二郎「放牧三馬」(91)
- やはりこの人は動物。淡い色彩の中の馬が可愛いねぇ。
第3章は「発展、そして解散」というタイトルで1934年から1944年。1944年には軍部の指導で解散になる、そこまでの期間です。というか、1943年までは開催してたんですねぇ。
- 藤田嗣治「メキシコに於けるマドレーヌ」(101)
- この女の人、白いワンピースが素敵で、ひだの感じが良いですね。陰になった部分を青で表現しているのが、ひだの質感を出しているような。
- アンリ・マティス「青い胴着の女」(110)
- ブリヂストン美術館のマティス。これ、二科展で展示してたことがあったのか。
最後の第4章は再興期。1945年から2015年、って要するに戦後です。扱ってる時代は70年間と一番長いのに、扱ってる作品は一番少ないのは、どう解釈するべきなんだろうなぁ……。
- 岡本太郎「重工業」(123)
- 人が歯車で回っていくと長ネギが三角形(製品)になるのか。
結局見終わってみると、苦手な人以外の作品が沢山あったので、結構楽しめたという感じでした。こういうことがあるのでパンフレットだけで展示を判断するわけにはいかないのですが、パンフレットと公式ホームページである程度どこを見るかの優先順位は決めてしまわないといけないわけで、難しい問題ですわ……。