昨日に続いて一遍聖絵、その7巻以降についての感想を書いておきましょう。
(6巻までの感想はこちら)
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7巻はちょっとややこしくて、国宝に指定されている原本が遊行寺と東博の両方にあります。どういうことかと言うと、修理の過程か何かで模本と原本が混ざってしまい、主に詞書の原本が遊行寺に、絵の部分の原本が東博所蔵の方に伝わってしまったという。両方とも残って良かったというべきか。今では両方とも国宝指定されているので、今更原本のみの巻物に戻すことは無いのでしょう。
で、この巻で目を引くのは、大津の逢坂の関のところにあったという関寺での踊り念仏。堀に囲まれた島の中で大勢で足踏みをする姿は、島が沈まないといいのですが。
この巻では会場で龍(竜巻ですかね?)と出会ったり美作一宮に行ったり、2巻でも行った四天王寺に行ったりと。
四天王寺は塔と本堂が直列なので直ぐにそれと判ります。
この巻で詣でたのは京都の石清水八幡宮。なかなか立派な社殿です。
その後、石清水から淀へ降りていくのですが、坂道がなだらかな感じが良く表現できています。
10巻(展示:神奈川歴博)
ここで訪れたのは備後一宮。そしてそこからたっぷり間をあけて厳島神社と。厳島神社は回廊が「日」の字になっていて、あれ?そんな形だったかなぁと思ったり(地図を見ると、確かに「日」の字の形ですね)。
その後に訪れたのは大江島の大三島神社。塀や屋根がボロボロで、神社の勢いが落ちているのを物語ります。
11巻(展示:遊行寺)
こちらでは、阿波の後に淡路島へ渡ります。鳴門海峡はさすがにちょっと波が高いようで。
12巻(展示:遊行寺)
最後の12巻では、一片の入滅を描いています。が、この人だかりはどう見ても涅槃、ですねぇ。
と、12巻を4か所で見てきたのですが、同じ一遍聖絵という題材ながら、それぞれの場所で趣向を凝らした展示をしていて面白かったです。展示の質的なところでは神奈川歴博と東博がやはり慣れているなぁという感じですが、金沢文庫は遊行寺は仏教専門の立場を活かした展示をしていた感じでした。
しかしそれにしても、一遍聖絵は諸国寺社仏閣めぐり絵巻状態で見ていて楽しいですね。この楽しさは、玄奘三蔵絵に近いものがありましたです。