出光美術館は今年が開館50周年だそうで、それを記念する展覧会に行ってきました。題して「美の祝典」。
今回の展覧会で一番の目玉は国宝の伴大納言絵巻。教科書にも載ってる、アレです。
これって以前は伴大納言絵詞と言ってた気がするのですが、全三巻のうちの上巻には詞書が欠落してしまっているので単純に絵巻と言うようになったのでしょうか。
この上中下3巻を、1月に1巻ずつ3ヶ月にわたって展示するということで、何でも展示をするのは10年ぶりだそうです。そんなこともあって、出光美術館には珍しい混雑対策ぶりで、
- 入口には入場券購入列用の誘導ロープを設置して
- ルオーとムンクを引っ込めてコインロッカーを増備して
- ロビーの休憩スペースは机を撤去して椅子を増やして
- 伴大納言絵巻の前には東博さながらの展示解説付きの待機列スペースを確保して
という……。
ですが、流石に初日なので、その対策が全て無駄に見える空きっぷりでしたけど。きっと、大型連休の頃には大活躍するのでしょう。
さて、その一番の目玉であるところの伴大納言絵巻、今展示されている上巻には、有名な応天門が炎上する場面があります。この場面、炎上する様子もリアルなのですが、何よりも燃える様子を見ている群衆と言うか野次馬と言うかの表情がいいですね。
「てぇへんだ、てぇへんだ。応天門が火事だ!」
「おぉいやばい、火の回りがはえーぞ、逃げろ!」
「普段火の気のない応天門だけ、なんで燃えてんだよ!」
といった声が聞こえてくるような感じすらします*1。
教科書で有名な場面を見たい方は、上巻が展示されている5月8日までが狙い目ですよ。
(伴大納言絵巻は、こちらも参照)
www.idemitsu.co.jp
えっと、伴大納言絵巻のあるのは2つ目のフロアなので、1つ目と3つ目のフロアには他の作品もあるわけで……。その中からも、いくつか紹介しますね。
- 宇治橋柴舟図屏風
- 中央に柳が描かれて、右には宇治橋、左には水車と、宇治橋を描く際の定番アイテムが金字の屏風に並びます。宇治川の川面が装飾的ですが、波の感じは長谷川派とは違うような?(良くわかってない私)。
- 吉野龍田図屏風
- 吉野の桜と龍田側の紅葉。どちらも画面を埋め尽くして、既に白と赤のコントラストを楽しむ抽象絵画ですね。そう思ってみると、とんでもなく最先端の絵画に見えてきました。
- 冷泉為恭「雪月花図」
- 月と花は、源氏物語の若菜上で朧月夜に光源氏というか准太政天皇が合う場面。この場面って、朧月夜から色よい返事が無いのに押しかけるわ、出かけるに際して紫上に「末摘花が最近病気で……」と嘘を言って六条院を抜け出すとか、なかなか最低な場面だった気がします……。
一方、雪の方は枕草子にある香炉峰の雪。超定番ですね。
全体的に、淡い墨で描かれた上品さと、室内の丁度までしっかりと描きこまれている丁寧さが良い作品です。 - 伝 俵屋宗達「月に秋草図屏風」
- 秋草が、まるでスタンプで押したかのように程よい間隔で配置されているのがリズミカル。秋草はススキも萩も可愛らしくてねぇ。
おまけ:毎度毎度ですが、ロビーからの眺め。
春を通り過ぎて初夏の感じになってきましたね。