月猫ツーリスト雑記帳

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国宝信貴山縁起絵巻@奈良国立博物館

奈良国立博物館の「国宝信貴山縁起絵巻」を見てきました。

奈良国立博物館では毎年のように、春には有名な絵巻を全巻広げて展覧するというのをやってます。で、今年は信貴山縁起絵巻がその対象になりました。
毎年のようにやっているせいか、すっかり行列の捌き方が上手くなっている奈良国立博物館、3巻しかない絵巻のために東新館の展示室全てを使って、待機列のスペースをたっぷり確保していました。なんか、各巻ごとに60分待ちまでなら対応できそうなスペースがありましたね。

ちなみに私が見に行ったときは

10分待ちという表示があったのですが、実際には各巻ごとに行列があったので、10分×3=30分待ちだったりします……。これから行く方はその辺りご注意を。


それでは、信貴山縁起絵巻を見ていきましょう。
まずは「山崎長者巻 」。命蓮が駆使するマジカルな飛鉢の物語(展示ケース横の作品解説より)です。というか、作品解説にマジカルとか出てきちゃうんだ、ってほうがびっくりですわ。托鉢をするのに鉢を法力で飛ばして飛ばしていた命蓮さん、山崎の長者が托鉢には答えずに鉢を蔵に入れてしまったところ、蔵ごと鉢に乗って飛んできてしまったというお話です……。いや、托鉢にはやっぱり出向いた方が良いと思うのよ……。

それはともかく、人物が生き生きしていたり、山の線に勢いがあったり、なるほど平安絵巻の最高傑作とも言われるだけのものがありました。


2巻目は「延喜加持巻 」。醍醐帝が病気になった際に、信貴山に居ながらにして病気を治してしまったという話。いや、帝の所には出向いた方が良いと思うのよ……。

それはともかく、岩の表現がとても良いのと、清涼殿まで飛んでいく護法童子がかっこよくて生き生きしていて。とにかく動きのしっかりした絵巻です。


3巻目は「尼公巻 」。実は命蓮には姉がいて、その姉が信濃からはるばる命蓮を探しにやってくる、というお話。いや、お姉さんには時には居場所くらい知らせてあげなさいよ……。

それはともかく、これも尼君が超えてくる深山の表現が良くてね。未だ室町まで200年ほどありますが、水墨山水画の前身を見るような気がします。あと、尼君が命蓮を探して方々歩いている場面では、平安の庶民の日常も垣間見えて。これが鎌倉時代の庶民と変わりないのね。

で、絵巻の一番最後には……、1巻目で飛んだ蔵が未だ残ってたりして。茶目っ気もたっぷりの絵巻さんです……。


とまぁ、話の筋には突っ込みどころ満載なのですが、人物の躍動感や自然の表現など、絵画的な意味で見所の多い絵巻でした。


と、絵巻で充分お腹いっぱいなのですが、それ以外の作品についても2点ほど。

金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅 第六塔(中尊寺蔵)
お経の文字で九重塔を描いてしまったというもの。何度か見てますが、いつ見ても小さな字で凄いなと。といいつつ、ちょっと建物が傾いてる辺り、字を書くのに専念しすぎたのかなぁなどと。
大日如来坐像(40)
平安時代大日如来さん。ふっくらしていて、鎌倉の慶派の作品と比べて大人しそうだわ。

おまけ:
奈良国立博物館は本館のほうの改良工事が完了して、リニューアルオープンしてました。
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何しろ雨漏りをして文化財を守れなくなったので急遽リニューアルすることになったというものなので、そんなに大きくは弄らないかなと思っていたのですが、なんと、重要文化財であるために壁や天井に照明を取り付けることの出来ない、その壁の内側に新たな壁を作ることで、そこに空調やら照明やらをもってくると。いや、考えましたね。
きっとこのやり方、耐震強度の問題もあって修理が必要となる京博本館でも、取り入れられそうな気がします。