月猫ツーリスト雑記帳

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皇室の名品−近代日本美術の粋@京都国立近代美術館

谷山浩子さんのコンサートが大阪であった今月15日ですが、コンサートのついでに京都国立近代美術館での皇室の名品展を覗いてきたのでした。
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皇室の名宝展、というと、2009年に東博であった展覧会を思い出しますが、今回の展覧会は東博の時の前記の後半で展示していた近代日本の美術品だけの展示となっています。そんなわけで、2009年に見たものもあり、見てないものもありという展覧会なわけですが、如何せん所蔵する三の丸尚蔵館の展示室が小さいので、今回の機会を逃すと次がいつになるかわからないですから今日と出会っても見に行くわけです(なぜか言い訳から入る)


と、そんな皇室の名品展ですが、いきなり最初の部屋が凄かった。一歩入ると、明治宮殿が格天井まで含めて再現されているのですから。もちろん、本当の明治宮殿はもっと広かったでしょうし、再現といっても壁紙ですから何を言わんや、というところもありますが、凄かったんだから仕方がありません。
そんな、明治宮殿を再現されている部屋に、所狭しと飾られる工芸品。いや、味があります。また壁には三代川島甚兵衞の「綴錦『春郊鷹狩・秋庭観楓図』壁掛」がかかっているのですが、これも雰囲気にあっていて。しかもガラス越しとはいえ30cm位まで近寄って見ることが出来て、本当に織物なんだと再確認したり。実に素敵でした。


この先の2章からは、展示室は普通になりますので、特に気に入った作品に絞って。

まず2章は、「明治期の美術工芸と博覧会」。明治初期、勧業博覧会の時代の作品が並びます。
森寛斎の「古柏猴鹿之図」は、この人らしいリアルな鹿さんが特徴。それにしても猿さんは鹿に戯れすぎかと。
柴田是真さんの「漆画帖」。是真さんが毎度の通り、漆で無茶をしているのが見られます。
並河靖之の「七宝四季花鳥図花瓶」。七宝で真っ黒というのも凄い上に、その上に描かれている桜が、地の黒色との相乗効果で凄く鮮やかで、妖しさすら感じます。過去に何度か見てますが、何時見ても恐ろしさを感じてしまいます。
(宮内庁三の丸尚蔵館)

濤川惣助「七宝墨画月夜深林図額」。これも七宝ですが、並河さんの黒一色とは違って、こちらは白がメインの色。そしてそのうえに墨絵が描かれるという。焼物で墨絵とはこれ如何に。


3章は「皇室と官展」というタイトル。
もうこのコーナーは、川合玉堂の「雨後」と上村松園の「雪月花」が並んでいるという、綺麗すぎる並びが素敵すぎて。「雨後」の雨上がりに少しずつもやが晴れていくような空気感も良いですし、雪月花は平安衣装が可愛くって。
このコーナーだけでご飯3杯は行けてしまいそうです*1
(宮内庁三の丸尚蔵館)


4章に行きまして、「慶祝の美」。即位大礼などの際に作成された芸術作品や工芸品をまとめて展示しています。
最初の方にあったのが、初代龍村平藏の「錦綾帖」という織物の端切れをまとめたもの。端切れと言うなかれという細かさで。もう少しサイズを大きくしてみたいと思わせるものでした。
鏑木清方の「讃春」。セーラーの女の子がかわゆすなぁ(そこかよ)。
四代 飯田新七の「孔雀図刺繍壁掛」。来ました、飯田高島屋。刺繍でクジャクを描いてしまう変態っぷりが良いです。
御木本幸吉の「瑞鳳扇」。ミキモトが作ると扇にも真珠が散りばめられるのですね

あと、「京都市画帖」など、複数の画家が描いた色紙を寄せ集めたものがありましたが、有名な画家がぞろぞろと出てくるなかでも松園さんの気品が際立って至るように感じます。


5章は「皇室と日本美術院」。日本美術院といえば横山大観で、予想通りいかにも大観な富士の絵がありまして……。いつのまにか、大観の富士の絵を見ると素通りしてしまう人生になってます……。
(宮内庁三の丸尚蔵館)


上の階に上がって、常設展示室を一部潰しての第6章は、「御肖像と大礼」というタイトル。冒頭に、平成2年の即位大礼の時の写真が。このときの天皇陛下や秋篠宮妃紀子さまがお若くてねぇ。あれから25年が経とうとしているのを感じてしまいます。

肖像画は、明治天皇大正天皇昭和天皇を描いたものが。何故か肖像画でも大正天皇が一番ぼんやりしているように感じます。
あと、即位大礼といえばと、悠紀・主基地方風俗歌屏風も来てました。私が見たときは後期展示だったので川合玉堂が悠紀地方(滋賀県)、山元春挙が主基地方(福岡県)を描いた 昭和度のもの。玉堂さんのは山種美術館で先日あった川合玉堂展では下絵しか見られませんでしたので、良い機会になりました。瀬田唐橋で自転車とか通っているのが、大和絵調の画面全体と合っているような、合ってないような。遊び心が合って楽しいです。


と、こんな感じで見て回ること90分という感じ。皇室や三の丸尚蔵館の所蔵する作品を見る機会は東京であれば数年に1度ありますが、東京以外で公開される機会が本当に少ないので、今回の機会は貴重だったなと。とくに近代工芸は京都が本場なので、京都に関連のある作品も多かった気がします。

数年に1度でも良いので、またこういう東京以外で見る機会があると良いのですが……。

*1:展示室内での飲食はご遠慮ねがいます。