出光美術館というところは恐ろしい所で、所蔵品だけを使って屏風の展覧会をやると仰る。しかもサブタイトルには「その変遷と展開」って屏風の歴史をひもとこうという意欲的な展覧会。半分怖いものみたさで行ってきました。
で、入ってみると、最初の展示は南北朝時代。その次は室町時代。本気で屏風の変遷を辿ろうとしています。そんな室町時代の作品のうち、「四季花鳥図屏風」というのは1469年に作られた、年代の特定された屏風では最も古いものだそう。そういうものを持っている出光美術館、いつものことながら侮れません。
それにしても、この作品に描かれている白鷺、他の作品でも見かける構図で、室町時代には狩野派とかの描き方がもう揃い始めていたんだなと、そんな事を思う訳です。
第2章は、物語絵の名場面。源氏や伊勢などの名場面を屏風に描いたものが展示されています。
「宇治橋柴舟図屏風」。今年の始めごろに散々通った長谷川等伯展にも宇治橋の構図がありますが、この構図も私は好きです。それにしても、宇治橋は今では水車が近くにあるなんて想像出来ない場所になってしまっていますが、昔はもっと鄙びた所だったんでしょうね。
「三十六歌仙図屏風」。岩佐又兵衛さんの作と伝えられる作品ですが、屏風の上のほうに三十六歌仙の方々がずらっと並んでいて、大喜利をやっているように見えて、楽しそうです。
「源氏物語図屏風」源氏物語の54帖の各帖から、名場面を1つずつ選んで描いたもの。なんで野分から描かれているのかと思ったら、今回展示されているのが左隻で、別に右隻があるから、ということのようです。それにしても、源氏物語はやはり基本のようであります。
そして第3章は風俗画の熱気。桃山から江戸時代の、風俗画を屏風にしたものを展示しています。
「江戸名所図屏風」。八曲一双の横に長い屏風ですが、人の数がとても多い(図録に拠ると2000人以上)上に、人の表情がとても細かい。江戸の活気が伝わってくるようで、是非ブラタモリで使って欲しいなと。
と、屏風自体は20点ほどでしたが結構楽しんでしまって……出光美術館怖るべし。しかし恐ろしいのは展示だけではなく図録もでして……、その20点程の屏風に対して160ページの図録を作ってしまう辺り、やりすぎです。ページに余裕が有るので、拡大図が沢山あり、また、屏風としてジグザグの状態になっている写真があったりと、見ていて楽しいです。作品点数から考えると割高ですが、買って損はいたしません。
ということで、最初の心配は何処へやら。やはり出光にハズレは有りませんでした。会期は25日迄ですが、6日からは後半戦で風俗画の代わりに景観図が飾られるそうです。こっちも見てみたいところです。