月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

美術館の宣伝活動についての一考察

昨日、京都国立近代美術館twitterアカウントが運用停止になるということがありましたが、アカウント停止に至った理由について詳細を語って下さったおかげで、美術館の情報発信(広報活動)について考えることが出来ました。
なお、アカウント停止に至った背景は、 http://twilog.org/Momakarchive にまだ残っていますので、まだ見てない方は直接見て考えを巡らすことをお奨めします。とりあえず、以下に私の思ったことを書きますが、意見には個人差がありますので、賛同する、しないは読まれる方にゆだねます。


日本の公立の美術館の多くに見られる現象ですが、集客というか宣伝というか、そういうところに全く力を入れていない。それならば展示に力を入れているかといえば、常設展は過去から現在、西洋も東洋も均等配置で時代順に並べているだけで幹がない。要するに力が入ってません。公立の美術館はたいていの場合、条例などによって設立の根拠が示されているはずで、そこには、市民の文化水準向上のために美術館を運営するんだみたいなことが書かれているわけで、要するに、市民の方に見ていただかないと存在意義そのものが否定されるわけです。

ちなみに、独立行政法人国立美術館(西美、新美、東近美、京近美、国立国際の運営母体)の目的には、このように書かれています

独立行政法人国立美術館は,美術館を設置して,美術(映画を含む。)に関する作品その他の資料を収集し,保管して公衆の観覧に供するとともに,これに関連する調査及び研究並びに教育及び普及の事業等を行うことにより,芸術その他の文化の振興を図ることを目的とします(独立行政法人国立美術館法(平成11年法律第177号。以下「国立美術館法」といいます。)第3条)。

まぁ、公衆の観覧に供すればよいので無理に客を呼び込まなくても良いのかもしれませんが、文化の振興を図るためには理解者を増やすことが必要と考えると、やはりお客さんをある程度確保しなければならないのではないか、と思うわけです。

また、最近では公立の美術館であっても独立採算、とまでは行かなくてもある程度の収入を確保することは求められるわけで……、当然ながら人件費の抑制だけでは収支の改善は覚束ない以上、観客を増やして対応するしかないわけです。


さて、お客さんを増やすにはどうするか、というと、手っ取り早いのは集客力のある企画展を開いてしまうことですが、企画展を開くには借りてくる美術品に対して高額な保険を掛けないといけないので、簡単にはできません。となれば、持っているものを展示する通常展で勝負をしなければならないのです。当然ながら、通常展に作品を展示しているだけでは入場者数は増えません。ちゃんと目玉になる展示物があることをホームページやメールマガジンで目立つように告知することが大事です。
更に、展示の際も出来れば照明などに工夫をして、目玉になる展示物を目立たせる方が良いです。ここまでをきちんとやれば、ファンが出来てくるでしょうから、後はそのファンの発言に耳を傾けて、ファンを手放さないようにする、それが大事だと。困ったことに今は検索ワードを入れれば、美術館に来た人の感想を簡単に拾えますので、その気になればファンの方の感想を手に入れるのは難しいことではありません。結局、そこまでこだわって展示を改良していくことが出来るか、学芸員さんの熱意次第なのかもしれません。


ここまで書いてみて、要するにこれは東京国立博物館のやっていることを全国の美術館に真似をしろと言っているのと同じだなと。東博では、確かに平常展に目玉は沢山ありますが、お客さんに強くプッシュする作品は2〜3点に絞っています。今だったら夏秋草図屏風の1点に絞って宣伝をしていて、公開Webページのトップに写真入りで紹介する熱の入れよう。東博のWebページは頻繁に更新されるのでよく見に行きますし、Webページを見て実際に東博に行ったことも何度か有ります。やはりWebページの更新頻度は、集客にとっては大事なようです。なんだけど、Webページを更新するためにも、学芸員さんや調査員さんがネタを作ってくれないといけないわけで……。


学芸員の方は、是非、美術研究だけではなく博物館研究の分野でも専門性を発揮して、美術館の集客に寄与して貰わないと、です。