月猫ツーリスト雑記帳

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平山郁夫と文化財保護@東京国立博物館

土曜日のことですが、東京国立博物館で「仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護」を見てきました。
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昨年は前半は土偶展や長谷川等伯など混雑する展覧会がありましたが、土偶は狭く、等伯は期間が短くて入場者数としてはそんなに多くなかった状態。後半は細川、中国文明、東大寺と宣伝の割には入場者数の少ない展覧会が続くと、なんとの調子が今ひとつの東博でした。今回の展覧会は文化財保護を前面に出しており、入場者数の予測も少なめで、どうも落ち着いた、学術的な展覧会の予感がして、そんなには期待をしてなかったのですが、平山郁夫さんが好きなので見に行ってきたという次第です。


ところで、今回は珍しく、音声ガイドを借りました。なんといってもナレーションが山根甚世さん。NHKの元アナウンス室長、というよりも新日曜美術館で、はなちゃんと一緒に司会をしていた方です。この方の声は安定しているし聴きやすくて、好きでございます。


展示は前半と後半に分かれていて、前半は平山郁夫さんが旅をし、保護をしたシルクロードの仏教遺跡を仏教伝来の道の順に紹介しています。んで、後半は薬師寺の「大唐西域壁画」を7面とも持ってきての展示です。

前半は、場面を「ガンダーラ」「バーミヤン」「西域」「敦煌」「中国」「アンコールワット」に分け、それぞれ、まず最初に平山郁夫さんが描いた、その土地にちなむ絵画を展示したあとに、その土地から流失し保護された仏像や壁画が展示される、という趣向になっています。平山さんの、岩絵の具が輝く絵を見た後に仏像を見ると、その仏像がどんな風土の中にあったのか想像がつき、より深く見ることが出来る気がします。なんとなく、東博の本館1階特別5室でやっている「仏像の道」を大々的にやっている感じでもありますが、平山さんの絵が効果的に働いている気がします。

しかも今回は文化財保護がテーマなので、展示されているものの中には戦争などで国外に流失したものも多く含まれます。バーミヤンの大仏とともに吹き飛んでしまった壁画を修復したものや、本来ならカブールの博物館にあったはずなのに流出したものを保護した仏像、そんなものも展示されていて、やはりその仏様が辿ってきた道を考えてしまいます。
そんな平山さんが集めた、というか保護した仏像は清里にある平山郁夫シルクロード美術館に普段は展示されているそうです。この美術館は季候が良くなったら見に行かないといけません。


後半の薬師寺玄奘三蔵院の大唐西域壁画。この壁画は薬師寺で一度見たことがあるはずですが、あのときはガラス越し、今回は正面で障害物無しに見ることが出来ます。若干設置している位置が高い気もしますが、ガラスがないと本当に雲母が輝いているのが判ります。日本画はガラス無しで見るに限ります。


と、当初の不安は何処へやら、すっかり堪能してしまった展覧会でありました。あれですね、「文化財保護」っていうタイトルでだいぶ損をしていますわ。良かったので、多分もう1回か2回は見に行きたいところです。