サントリー美術館で開催されている、鳳凰と獅子展に行ってきました。
今年はサントリー美術館が開館50周年ということで、サントリー美術館での展覧会は、どれも力が入っています。この展覧会もそうで、鳳凰と獅子に関する美術品が、これでもかというほど集められています。集めすぎたのか、展示替えが何度もあるのが問題なのですが……。
尚、私は今回の展覧会に伊藤若冲さんの旭日鳳凰図(三の丸尚蔵館蔵)が出てくるのが一番の楽しみでして……本当に三の丸尚蔵館は所有するに対して建物が小さすぎるので、中々作品を見ることが出来ないのが難点です。
そんなわけで、どうしても若冲さんに眼が行ってしまうのですが、それ以外にも素敵な作品が多くありました。
まず、入って最初の方にあったのが桃山時代に描かれた「日吉山王・祇園祭礼図屏風」。川を渡る御輿のてっぺんに鳳凰が描かれているので今回登場していますが、桃山時代の屏風らしく、人物などが非常に細かく描かれています。独り一人の表情も違うので、見ていて飽きません。
「鳳凰文磚」。飛鳥時代のタイルですが、尾羽がきりっと持ち上がっていて、何ともかっこいい。流石、鳳凰のご先祖様という感じです。
なお、この後の時代の鳳凰も、この鳳凰をモデルにしたのではないかと思うほど、姿がよく似ています。
平等院鳳凰堂のてっぺんにいる鳳凰も来ていました。もちろんレプリカですが。こいつも尾羽が凄くかっこいい。まあ実際問題として、羽根には筋肉がないので、こんな感じに尾羽を上にそらしていることは出来ないとは思いますが、絵としてはカッコいいです。
ところで、平等院鳳凰堂の英訳が「フェニックス・ホール」になっていて……あっているけど、ねぇ。
狩野探幽の「霧鳳凰図屏風」。この絵の鳳凰は何とも格好いい。尾羽とか、凛々しいです。鳳凰は飛んで良し、立って羽を広げて良し、良い鳥です。惜しむらくは、実在しないこと……。
そして、本日の目玉、伊藤若冲の「旭日鳳凰図」。やはり若冲のカラーは圧倒されてしまいます。この前NHKで動植綵絵の技法をやっていましたが、この作品でも同じような技法が使われています。羽根の色とか一枚一枚異なっていて本当にやり過ぎと感じるほど。
それにしても、この鳳凰の眼は(冗談めかしてエロ眼と呼んでいますが)本当に好きなのです。二羽の鳳凰のポーズも素敵です。折角なので、動植綵絵の老松白鳳図のように、尾羽がハート型だったら完璧なのですが、ま、それは無い物ねだりです。
神坂雪佳の「白鳳図」。この人らしい淡泊な白鳳ですが、顔が何かかわゆくて好きです。
そしてもう一つ伊藤若冲から、「樹花鳥獣図屏風」。静岡県立美術館の至宝です。展示している場所の関係か、今までで一番接近して見ることが出来ました。。観客も少ないのでほとんど独り占め状態。近づいてみると、確かにプライスコレクションのよりも静岡県立美術館の作品の方が、細やかに作られている気がします。動物の描き方も丁寧ですし。
と、ここまでが4階、続けて3階に降ります。
「天台岳中石橋図」。橋の上にいる獅子さん、頭にボタンの花を載せています。「獅子だって恋をしたい」って意味なのかと思いましたが、能の影響だそうで。でも、可愛いです。
長澤芦雪さんの「唐獅子図屏風」。芦雪さんどうしちゃったのと言いたくなる怖い獅子。獅子なのに頭の毛が薄いし……。虎は描くと猫になるのに、獅子はちゃんと猛獣になるのは不思議な感じです。
竹内栖鳳の「大獅子図」。明治になって本物のライオンを写生できるようになってから描いた絵だけあって、今までの唐獅子ではなく、ライオンが描かれています。所々ある白い毛が効果的で、リアルさやかっこよさを引き上げているように思えました。
それにしても背の高い屏風で、この作品は展示施設を選ぶな〜、藤田美術館では展示可能なんだろうか?、などと、変なことも考えたりしました。
何か私の趣味は獅子よりも鳳凰に偏っているようで、鳳凰ばかり見ていた気もします。でも、良い作品が多かったです。鳳凰も獅子もおめでたい象徴なので、作品自体が丁寧に扱われていたのでしょうか、状態の良い作品が多かった気もします。
ということでこの展覧会、冒頭も書いたとおり展示替えが多いので、あと2回は行くつもりでございます。今度行くときはどんな作品が展示されているのか、楽しみです。