昨日の土曜日ですが、山種美術館で、山粼館長によるギャラリートークがありました。主催(共催?)は「青い日記帳」のTakさん。Takさんは最近本の執筆に携わったり、さらにもう1冊執筆中という多忙な中、このような企画もするパワーが凄い方です。
- 作者: 朝日新聞出版
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2012/02/24
- メディア: 単行本
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せっかくなので、Takさんが執筆に関わった本を紹介しておきます。これも良い本なので、是非お手にとって。
ということで、そのギャラリートークの内容を書いてみたいと思います。勿論、すべてをメモしたわけではないので、適宜記憶と想像で補完して書いてますので、100%合っているとは思わないように。
なお、途中に入れてある写真は、今回のギャラリートーク時間中のみ撮影を許可されたものです*1。
- 奥村土牛「醍醐」
- 展示の最初は、奥村土牛の醍醐。ちょうど「美の巨人たち」で今日(つまり昨日の土曜日)に放送があるそうです*2。この作品は土牛さんが83歳の時のものですが、とても若々しい作品です。
桜の色は、胡粉に「綿臙脂」という絵の具を混ぜてピンク色にしたもの。近くに展示されている加山又造の「夜桜」も綿臙脂ですが、隣にある石田武さん(とても細密な描写が特徴)はガラスを用いた新和絵具です。
「綿臙脂」は綿に虫の死骸を染み込ませて作るもので、今は殆ど作られていないとか。というところで本物の「綿臙脂」が登場しました!。これは東京芸術大学の宮迫先生が作って寄贈してくれたものだそうです。確かに、臙脂色ですワインレッド。これと胡粉を合わせると淡いピンクになるというのも、なんか凄いです。
- 加山又造「夜桜」
- 加山又造というと琳派的なものを思い浮かべますが、この作品のころから水墨の方に写っていてきていて、この作品は水墨的なところと、金を使ったところが合わさって、とても華麗な作品になっています。
- 東山魁夷「春静」
- 川端康成のすすめで京都の四季を描いたものの1枚です。京都の鷹峯を描いたもの。
鷹峯は本阿弥光悦の住んだところで、そんなことを思いながら描いたのかもしれません。
左(空)のほうは金泥、右の山は緑青のグラデーション。暗いところは緑青をフライパンで焼いたものを使っています。
- 冨田溪仙「嵐山の春」
- この屏風は状態がよくなかったのですが、先日修理が終わって15年ぶり(茅場町時代以来)の展示だそうです。その意味で、今回最も注目の作品です。
- 奥田元宋「奥入瀬」
- 新緑がとても美しい作品。川の水を胡粉のしろで表現している。上の方に金泥が見えるので、もしかしたら、全体に金泥や金箔が塗られているのかもしれません。
- 橋本明治「朝陽桜」
- この作品や、後で展示されている上村松篁の作品は、新宮殿に飾られているのとほぼ同じ物を描いてもらったものです。
- 松岡映丘「春光春衣」
- 松岡映丘は柳田国男と兄弟で、当時は有名でしたが、最近はあまり注目されていない画家。ただし、山下裕二先生が押している画家です。大和絵風の画風で、金箔の砂子が上の方にあったり、絢爛豪華。この頃、平安時代や昔の絵を描くブームがあったそうです。
- 橋本雅邦「児島高徳」
- そんな昔を描くブームの一枚。歴史人物画ですが、桜の表現が良いので今回展示しています。
ここで少し、展示ケースの話。展示ケースは一番大きなガラスを使って、屏風などの鑑賞を妨げないようにしています。また、透明度が高いので頭をぶつける人が多いです。また、照明は覗きこんでも見えないようにするため、実物大模型を作って実験して位置を決めたそうです。
- 川合玉堂(5作品)
- 奥多摩に疎開してから景色を気に入り、そこに住み続けた方、なので川を描いたものが多いです。
滑車を使った船を描いた作品がありますが、このような船は長良川で発明されたそうで、岐阜出身の玉堂さんは、幼い頃に見ていたのかもしれません。
玉堂さんの作品は殆どに人が描かれていて、可愛らしい顔が特徴です。
- 小野竹喬「春野秋溪 のうち 春野」
- 本当は2つセットですが、桜の展覧会なので今回は春だけです。教徒の人の自然観が感じられる作品です。
山種美術館では、今年福田平八郎の展覧会や竹内栖鳳の展覧会がありますが、東京で京都の画家の作品を見られる機会は少ないので、期待してください。
- 渡辺省亭「桜に雀」
- 明治末から大正初期の作品ですが、この頃は、このような絵が日本画の標準とされていたそうです。
と、こんな感じでギャラリートーク45分。濃密でした。これ以外にも、話は色々とありましたが、メモが追いついてません……。
あと、自分の感想は、もう一度訪問した折にでも……どうしても、トークの影響濃厚の感想になってしまいますから……。