月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

ザ・ベスト・オブ・山種コレクション(後期)@山種美術館

先週の日曜日、つまり3連休の中日の1月8日ですが、山種美術館に行ってきました。
ここでは「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」という、タイトル通りの展覧会をやっているのですが、この日訪れたのは、山崎妙子館長によるギャラリートークが行われたからです(企画された「弐代目・青い日記帳」のTakさんに感謝!)。

山崎館長といえば、山種美術館のコレクションを築いた山崎種二の孫であるとともに、速水御舟の研究者でもある人。当然ながら話はアカデミックな部分あり、自分の体験談もありと、ノンストップの1時間でした。
ということで、そんなギャラリートークで出てきた話に私の感想を織り交ぜて書いてみたいと思います。いえね、あえてメモを取らずに聴いていたので、当然ながら全部は覚えてないのよ……。


さて、ギャラリートークはまず最初に洋画から始まります。一番最初に展示されている小林古径の「静物」は古径唯一の洋画という珍しいもの。でも、どこから見ても日本画に見える作品です。影はないし、落款も入れてますし。

それから佐伯祐三の作品が2枚。「山種にも佐伯があったのか!」と良く驚かれるそうです。山種というと日本画のイメージがありますから、佐伯祐三は確かに結びつきません。
佐伯祐三は屋外で描いていたので、よく見るとゴミのようなものが塗り込められているのが判りますというので、確認してみたら、確かにこれは誇り?と思うものがありましたね。


そして近代日本画の方に入ります。
このコーナーで最初に展示されていたのは川合玉堂の「早乙女」。山種館長お気に入りの作品です。女性の顔がそれぞれ異なっていて、しかも明るいのが良い点です。

奥村十牛の「醍醐」では、十牛が遅咲きの画家だったことや、終戦直後に山崎種二は車に米を隠して十牛に会いに行って支援していたこと、といった説明がありました。また、桜に使われているピンクは、今では使われることのない、使うのに凄く手間のかかる顔料なんだそうです。確かにこの「醍醐」は、ほんのり桜色なしだれ桜が凄く好きです。あと、玉砂利の表現も素敵だと思います。

くるりと向きを変えると大きな屏風が2組。速水御舟の「翠苔緑芝」と、落合朗風の「エバ」です。
このうち速水御舟の「翠苔緑芝」は、琳派風な金地の屏風でありながら、紫陽花の細かさなどに見入ってしまう作品です。紫陽花が、本物の花と同様、花の一枚一枚に白い筋があるところまで表現されています。この紫陽花をどうやって描いたのか、また、枇杷の黄色はどんな絵の具を使ったのか、これは今でも謎だそうです。この作品は速水御舟が「喩え名前を忘れられても、この作品は残るだろう」と言ったそうで、そう言わしめるだけの不思議さがあります。単にネコが可愛いだけの作品では無かったです。


東山魁夷の「満ち来る潮」。これは皇居新宮殿の障壁画として描かれた作品を見た山崎種二が、普通の人も見ることが出来るように同じものをもう一つ描いて欲しいと頼み込んだ結果描かれたものだそうです。岩は一寸くすんだ緑色をしていますが、これは岩絵具をフライパンなどで焼いたものだそうです。
あと、この絵は非常に横幅のある絵ですが、山種美術館の展示室の寸法は、この絵を展示できるだけの幅ということで決められたそうです。まるで、大原美術館本館とアマン・ジャンの絵の話のようなエピソードです。


川端龍子の「鳴門」。龍子は鳴門に行ったことがなく、江ノ島の海を見ながら想像で描いたそうですが……江ノ島でこれを書くとはすごいです。

福田平八郎の「牡丹」は、いかちも中国での牡丹の絵を思わせる作品。それは画面の背景が薄ぼんやりした黄色のせいもあるのですが、これは裏から金箔や金泥を塗った裏彩色の技法によるものだそう。表に金箔だとキンキラキンになるのに、裏からだと落ち着いた感じになりますね。

そして再び東山魁夷。「秋彩」と「年暮る」です。これらの京都を描いた作品は、川端康成に「京都は今描かないとなくなってしまう」と言われて東山魁夷が四季を描いたものだそう。「年暮る」は京都の河原町御池にあるホテルオークラから東山の方面を描いたものです。言われるまで気づきませんでしたが、道を行き交う自動車なども描かれているのですね。

上村松篁の「白孔雀」。ここでは昨年7月末に行われた「日本画どうぶつえん」の記念講演会上野動物園の小山園長(当時)が話していたエピソード、上村松篁さんの家では沢山鳥を飼っていて、上野動物園にもいない種類も買っていたので雛を譲ってもらった話が披露されて、会場爆笑。たしかに、動物園よりも沢山の種類を買っている画家って何じゃらホイではあります。

平山郁夫の「バビロン王城」。とても絵の具を熱く塗った作品ですが、テレビで平山先生の制作風景を見たところ(平山郁夫は山崎妙子館長が東京藝術大学にいた時の先生ですが、大学で制作をすることがないため、制作風景を見たことはなかったそうです)、絵の具をとても薄く、そして何回も塗っていたそうで、だから剥がれたりしないのかと感心したそうです。


で、ここからは第2展示場になるのですが、第2展示場は狭いので平山郁夫の前で解説を続けます。

第2展示場は「御舟美術館」とも呼ばれている山種美術館らしく、速水御舟の部屋。ここでの注目は「炎舞」と「桃花」。
「炎舞」は、先日NHKの極上美の饗宴でやってた、御舟が肉眼では殆ど捉えることのできないところまで正確に炎を描いている話をしてました。
また「桜花」は娘の初節句のために描いたものだそうで、デッサンがしっかりしています。


ということで、ギャラリートークの内容を掻い摘んで書いて見ました。他にも何作品か説明していましたが、記憶が曖昧なので省略です。
というか、5日立ってもこれだけ記憶が鮮明とは……。良い話は記憶に残りやすい、ということでしょうか。本当に楽しい時間でした。