大田区立郷土博物館で開かれている川瀬巴水展ですが、会期が10月27日から3月2日までと、会期が約4ヶ月と長いのが特徴です。ですが、実際には前期、中期、後期と3つの会期に分かれていて、
- 前期「大正期から関東大震災後の復興期までの作品」(10/27-12/01)
- 中期「昭和初期から10年代の作品」(12/07-01/19)
- 後期「昭和20年代、及び晩年の作品」(01/25-03/02)
と年代順の展示なので、ゆっくりとはしていられません。
このうち前期の展示を11月30日にやっと見ましたので、簡単に振り返っておきます。
川瀬巴水は大正から昭和にかけての新版画の版画家で、風景画が中心の方。浮世絵でも美人画より風景画の方が好みの私としては、風景画が続くのは見ていて楽しいです。特に、行ったことのある場所が出てくると、盛り上がります。
特に注目して見ているのは、夕暮れや月夜の光と影の感じ。って、なんか自分が撮影する写真の好みと同じですわね。
ということで、どうやら私は川瀬巴水の版画を写真作品と同じように見ている気がします。まぁ、真昼の光よりも夕方の光や月明かり、そしてその明かりが作る影に惹かれるのは「もののあはれ」とか「陰影礼賛」とか、日本では割と良くある感性かと思いますので。
そんな光と影の表現が見られるものを中心に気に入った作品を挙げてみると
- 東京十二題から「深川上の橋」「木場の夕暮れ」
- 夕暮れと川面と木の橋の組み合わせという構図の2枚。正面からの夕方の光が良いです。
- 「若狭……久出の濱」木版書順序摺
- 刷りの順序を示す資料ですが、30回以上刷らないと、あの色にならないというのが。
- 日本風景選集から「出雲 美保ヶ関の朝」
- 普通の湊っぽい感じなのが好感で、このシリーズの中では一番好きと言うか落ち着きます。
- 旅みやげ第三集から「出雲松江」
- 同じ構図で曇り日、朧月、三日月とありましたが、夕方っぽい朧月の色が好きです。水面も綺麗に見えますし。松江は何度か行ってますので、確かにこんな感じだろうなと想像ができます。
- 新日本八景から「上高地大正池」
- 冬の大正池を描いたもの。冬の上高地は中々行けませんから(それ以前に上高地に行ったことないけど)、憧れますね
- 越中庵谷峠
- 以前、高山本線で高山から富山に向かった際に、富山県に入って猪谷を過ぎたあたりが、本当にこんな感じではるか下の方に町並みが見えて怖かったのですが、その光景のままだなぁと。今確認したところ、庵谷峠って、本当に猪谷から富山方面に向かったあとに通るトンネルのある峠なんですね。
- 相州七里ヶ浜
- 江ノ島が月明かりに照らされてます。今ではビルが多くてこんな感じには見えないだろうなぁと
- 二重橋
- 皇居の二重橋。水面への写り込みがとても綺麗だわ。
- 手賀沼
- 手賀沼は今となっては殆ど干拓されてしまってますけど、これは何処から描いて、今はどんな場所になっているのか、気になってしまったり。
と、感想を書いてみても、どうも風景画を写真としてみているな、私……