東京都美術館に、「世紀の日本画」展の後期展示を見てきました。
この展覧会、前期展示の時も書きましたが、「(1)世紀(続いた日本芸術院)の日本画」の展覧会です。
今回は、この括弧の中が判った上で見ますので、そんなに期待せずに肩の力を抜いて見ることができました。
では、手元のメモを元にちょっと作品を振り返って。
まずは日本美術院が生まれたころの巨匠の作品からという感じのコーナーです。
- 狩野芳崖「悲母観音」
観音だから観音開きなんでしょうかねぇ?などと枝葉から見てしまいますが(汗)。多分仏画の伝統なんでしょうね、観音様がとても細かく描いてるのが良いです。 - 菱田春草「四季山水」
朦朧体で描かれている部分もありますが、山などは輪郭もあって、朦朧体にこだわっているわけではない作品。です。でも全体的に緩い感じに見えるのは、そもそも春草さんの筆が柔らかいからでしょうね。 - 橋本雅邦「龍虎図屏風」
虎が猫でないところに近代を感じますね(ゑ?)。しかし龍は逆にコミカルな目になっているような……。
あと、波の表現は伝統的な狩野派のもののように思えます。その辺りは装飾性を意識したんでしょうか? - 奥村土牛「門」
このコーナーにあるのは、奥村土牛が日本美術院の理事長をやっていたことのある縁と思います。山種美術館の所蔵作品ですが、山種で見た記憶がちょっと不鮮明で……。何となく、すごく静かな作品に思えますが、ここまで見てきた作品がいずれも派手だったので、単体でみるとそれほどでも無いかもしれません。
地下1階の後半は、少し時代が進んで大正期の作品です。
- 小杉未醒「山幸彦」
フレスコ画のタッチで日本神話を描いている作品。解説にはシャヴァンヌの影響が指摘されていましたが、個人的には平面的な描き方がローマ時代のフレスコ画と日本画で通じ合うものがあったのかなと思いました。
1階に上がって、ここからは昭和以降の作品をテーマ別に分けての展示です。
- 新井勝利「源氏物語(薄雲)」
薄雲にしては、光の君の悲しさが光の君から感じられないのですよね……、あ、数珠持っているのね。この場面は藤壺が亡くなった時のものですから……。
ただ、桜と夕焼け雲の2つのピンクが混ざり合っている感じは、良い色でした。 - 小林古径「孔雀」
どうも小林古径さんの作品はどれも淡白に感じられます。多分この人、絵に遊びとか鋭さとか、何かしらの引っかかるものが無いのよね……。 - 速水御舟「比叡山」
夜に浮かぶ、パワフルな比叡山。前期にも御舟の風景画がありましたが、この方の風景画は絵に引き込む力が強いですね。 - 岩橋英遠「道産子追憶之巻」
今回一番場所をとっていた作品。細長く北海道の四季と動物を描いています。何となく原色が濃いめなのをみると点描っぽくも見えますが、点描ではないです。というか、全体的に奥行きが無いからそんなふうに見えるのかも - 北野恒富「茶々殿」
おや、大阪から北野さんだ。人物画のコーナーの中にあって、この絵が一番しっかりしたデッサンのように思えます。
なんとなく、前期よりも後期の方が色々と楽しんでみることが出来たように思えます。やっぱりこれも、前期はタイトルで過剰に期待した反動で楽しめなかったことが原因のような気がしますね。
ということで、展覧会関係の皆様におかれましては、展覧会のタイトルは過剰な煽りにならない程度に、でも興味を引くようなタイトル、というのを心がけていただければ幸いです……って、難しいですって、それ……。