上野の芸大美術館で、コレクション展をやっていたので行ってみました。
芸大のコレクション展は毎年春にやっているのですが今年はこの時期に。その代わりというわけではないでしょうが、『藝「大」コレクション』とめいうって拡大バージョンでお送りするようです。
ということで展示室に入ってみましょう。
フロアは地下2階と地上3階に分かれているのですが、順路で最初に案内される地下の方は、いつもの名品展といった感じです。
- 小倉遊亀「径」
- 展示室に入って最初に目に入る作品。そういう意味ではこの展覧会のファーストインプレッションを決める作品です。
これはね、単純に親子が歩いているだけに見えますけど、子供が一生懸命付いていってる感じと、それを後ろから鼻で押すように見える犬が良いのよね。 - 若杉五十八「鷹匠図」
- 江戸時代に描かれた洋風画。そういえば国芳にもこんな感じなのがあるから、ヨーロッパから来た本の挿絵を元に描いたんでしょうかね。「鷹匠図」といいますが、鷹は……青い置物というかチェスの駒のようなやつですか?
- 橋本関雪「玄猿」
- 猿がリアルなのと、枝はほんの少しデフォルメで。その差の分、猿に視線が行くようにしている感じです。
- 菱田春草「水鏡」
- 春草さん、好きだわ~。もうね、この人が長生きしてたら大観なんか絵の下手なオジサンどまりだったのにって思うのですが(ひどい)。
この絵はばっちり輪郭線があるのですが、朦朧体とか輪郭線とかは枝葉で、絵の中にある詩情のようなものに惹かれる気がします。 - 狩野芳崖「悲母観音」
- これも芸大と言えばの作品ですね。衣の流れるようなラインが観音さまに合っている気がするのです。
続けて3階の展示室へ。こっちは展示室に入って最初に出迎えるのは高橋由一の「鮭」。しかも「教科書で見たことある?」みたいな煽りつきで。
なんか最近、由一の「鮭」は教科書で見たことのある絵、として紹介されることが多いような。
それはともかく、このフロアでは卒業制作や、卒業時に描いた自画像などが展示されていました。
- 山口蓬春「晩秋(深草)・雨霽(伏見)」(洛南之巻六題の内1巻)
- この頃の鄙びた京都を柔らかく描く、蓬春さんの卒業制作です。それにしても、六題だというのに二題分しか買い上げない大学もせこいですな。
- 今和次郎「工芸各種図案」
- おっと、こんな人も藝大出身。図案化というので、今風にいえばデザイン学科出身ということのようです。
卒業時に描いた自画像は、いま活躍する現代作家のものを多数展示してました。
会田誠、山口晃の自画像は、如何にもあーたらしーわと言いたくなるものでしたし、松井冬子や橋爪彩も、その人のスターを感じるような絵でした。
唯一の例外は村上隆でしょうか。珍しく、普通の自画像ですな……。
ま、そんな訳で毎年やっているコレクション展と比較してどれほど「大」だったかというと微妙な気もするのですが、卒業制作のような普段見ないものを見られたのが良かったです。
子の展覧会、8月6日までが前期、8月11日から9月10日が後期ということですので、また後期に見に来ようと思います。