2年ほど前でしょうか、箱根の小涌園の近くに、岡田美術館と言う美術館がオープンしました。
この美術館、実業家の方が自分のコレクションを展示するための施設として作ったものですが、展示面積がとても広かったり、初代館長に小林忠さんを迎えたりと、本気度が半端ないのが特徴です。
そんな美術館ですが、行った人の話を聞くと広いのでとにかく時間がかかるということ。ただでさえ箱根は遠いのに館内で見る時間もかかるとなると、これは1日がかりになってしまいます。ということで中々行けなかったのですが、年末で他の美術館が閉館のタイミングに、思い立って行ってみたのでした。
ということで、岡田美術館への最寄り駅は、箱根登山鉄道の小涌谷駅になります。
で、ここから坂を上って……近道に見える細い道は坂が急すぎて息が切れますので、国道を上る方がいいでしょう……10分ほどで到着です。
最初に出迎えてくれるのが、巨大な風神雷神図。
これを正面から見ることのできる位置に足湯があるのですが、冬は寒いので屋外は避けて中に入ります。
で、中に入ると……各階の展示空間は東博平成館2階の特別展示室の大きいほうの一部屋くらいでしょうか。それが1階から4階まで(+5回に小さな展示室)ありますので……ちょっと広すぎて飽きました(汗)。というか展示室を見るのも体力勝負になってしまいますね……。
で、岡田美術館の4階は特別展のフロアになっていて、ここでは「箱根で琳派大公開」と銘打って、所蔵する琳派作品をまとめて展示してました。
この展覧会、9月から3月と会期が長いですが、前半は宗達・光琳、後半は抱一・其一を中心とした展示となってます。今は既に後半の方の展示になってますので、好物の抱一さん、其一さんが食べ放題と言う次第。これも、この時期に岡田美術館に行った理由です。
ところで岡田美術館の琳派作品と言えば、2015年1月に日本橋三越であった琳派名品展を思い出します。
lunacat.yugiri.org
このとき50点弱の展示でしたが、今回は全部お見せしますと言うことで、展示冒頭の挨拶文から力が入ってましたねぇ。
展示は、まず2階にこの2作品がハイライト展示されていました。
- 酒井抱一「月に秋草図屏風」(54)
- 抱一さんの秋草を描いた屏風。展示の感じもあって、伏す前のようにも見えます。抱一さんの秋草図というと東博にある夏秋草図屏風を思い出しますが、この作品はそれと比べて秋草がとても優しく見えます。月は黒くなってますけど、これは銀が変色したので目で補完して見てみましょう。
- 鈴木其一「月次扇面図屏風」(65)
- そして其一さんのほうは、物語上の情景から各月ごとにその月にふさわしいものを選んで描いています。其一さんらしく、花や鳥がやっぱりシャープだわ。
そして展示はメインの4階へ行きます。
- 酒井抱一「檜に啄木鳥、勾配に鴛鴦図」(55)
- 抱一の花鳥12ヶ月屏風の一部と見られる作品。。この抱一12ヶ月ではいつもですが、たらしこみの幹が良くて、雪の胡粉のまき散らしたのがきれいで、鳥さんが可愛いですわ、やっぱり。
- 酒井抱一「桜図」(51)
- 淡い桜の花。少し色が落ち着いていっそう可憐。
- 鈴木其一「立雛図」(57)
- 其一さんの立雛。花の淡さと雛のシャープさのコントラストが面白い。
- 鈴木其一・守一「月に秋草図」(69)
- 其一守一ペアで月と秋草を描いてます。なお、秋草は描表装ですが、シャープな描き方だねぇ。
- 鈴木其一「名月に秋草図」(60)
- これも、秋草がシャープな感じと、月を囲む夜の青さがいかにも其一さんだと。
- 鈴木守一「雨中白鷺図」(68)
- 雨にうたれる白鷺さん。雨をよけるように首をすぼめる感じがよく表現できてるなと。
- 酒井道一「桜花紅桃・新柳貝合図」(74)
- 桜だけでなく桃もあるので華やかな印象。
- 菱田春草「紅葉に小禽」(78)
- ここからは明治時代に入りまして。幹はたらしこみながらも陰影を気にしている感じで、琳派的な装飾性と、西洋的なリアルの間で悩んでるような感じもします。
- 神坂雪佳「春秋草図」(75)
- ゼンマイの先がくるっとした感じは、アール・ヌーヴォーとか入ってる気がしますよね。
- 神坂雪佳「兜に菖蒲図」(76)
- 島津家のために描かれたとみられる、端午の節句向けの掛軸。描表装でもあって、描表装の部分が装飾デザインになってるのが、神坂さんらしい感じ。
と、特集展示の琳派だけでもかなり良いものが多くて。正直おなかいっぱいです……。
いや岡田美術館、ここに行くときは物量に圧倒される前提で充分にお腹と頭を空かせてから行かないと、大変なことになりますわ……。
おまけ:これだけ大きな美術館なのに、ミュージアムショップがミニマムサイズなのは本当に謎です……。