出光美術館で10日から開催されている「水墨の風」という展覧会に行ってきました。
私にしては珍しく初日に行ったのですが、何しろ雪舟と長谷川等伯が2枚看板の展覧会ですので後半になると混雑するかもなぁと思いまして。とはいえ、この手の私の予想はたいてい外れるんですけどね。
で、この展覧会は室町から江戸初期にかけての水墨画の流れを、ほぼ出光美術館の所蔵作品で振り返ろうというもの。もうね、出光と言いサントリーと言い、所蔵作品で振り返っちゃう美術館というのも凄いものがありますわ。
それでは毎度の通り、気に入った作品を羅列しましょうか。
- 玉澗「山市晴嵐図」(01)
- 玉澗は雪舟も影響を受けた絵師だそうで、そう言われてみると筆の勢いというか叩き付けるような墨がライブペインティング上等な雪舟に似ていますな。
- 雪舟「破墨山水図」(04)
- その雪舟ですが、玉澗と似たような作品を並べていることもあって、なるほど影響有りそうね、と素直に思えますな。それにしても雪舟は勢いよね(?)
- 伝雪舟「四季花鳥図屏風」(07)
- 雪舟といわれると雪舟のような(岩のあたりが、そんな気もしますな)。中央に直線で竹が描かれているとか、水面の奥行き感とか、もう少し新しい時代の作品のようにも感じられます。
- 能阿弥「四季花鳥図屏風」(14)
- この作品、最古の水墨花鳥画だそうです。とはいえ、既に鷺の飛び方など様式は定まっているような。というのもこれらの様式は牧谿の描いたものを元に描いたからだそうで、最初から牧谿の影響があったのですね。
- 牧谿「叭々鳥図」(15)
- その牧谿の作品もありました。なんか叭々鳥の眼が可愛いわ。もしかして牧谿が流行ったのも、描かれる動物の可愛さも関係しているのではないでしょうか(ゑ?)
- 長谷川等伯「竹鶴図屏風」(18)
- 等伯さん、きました。奥の竹が霞んでいる感じが「東博の等伯」でお馴染みの松林図屏風を想起させます。竹の直線が力強いもの良いです。
- 長谷川等伯「松に鴉 ・ 柳に白鷺図屏風」(20)
- もう一つ等伯さん。これはカラスの家族が可愛いやつね。描かれているのがカラスなのは叭々鳥なんて日本にいないから、日本にいる鳥で描くとしたら……という理由だとか。あと左隻の鷺ですが、飛ぶ姿が確かに能阿弥の「四季花鳥図屏風」(14)と左右反転で、なるほどこうやって様式は伝えられていくのだなと。
- 土岐富景「白鷹図」
- 再び室町時代の作品に戻って。この作品は外隈で白い鷹を描いたもので、何かちょっと格好いいぞ。あと、まるで鉛筆で描いたかのような雰囲気も面白いです。
- 元信(印)「花鳥図屏風」(33)
- 花鳥図ですが鳥は小さめで、なんかこぢんまりで綺麗すぎる感じが。そんな辺りが印があっても本人作とされない要因ですかね。
- 岩佐又兵衛「瀟湘八景図巻」(34)
- 岩佐さんだって風景画を描くんです。この作品はやまと絵の山水画という感じで、丁寧さが見て取れます。
今回は展示の順序が良く出来ていたこともあって、玉澗から雪舟、牧谿から等伯といった様式の系譜が判りやすかったです。勉強になりますわ。
それと、牧谿から続く花鳥画の系譜が、結構自分の中にあるカワイイの判断基準になっていることにも気付いた気がします。鷺さんも叭々鳥もカラスさんも、みんな可愛かったですわ。