月猫ツーリスト雑記帳

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「江戸名所図屏風」と都市の華やぎ@出光美術館

出光美術館で、江戸名所図屏風をテーマにした展覧会をやっていたので、見てきました。
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江戸名所図屏風とは簡単に言ってしまうと洛中洛外図屏風の江戸バージョン。江戸時代の江戸の賑わいが一目でわかるものです。
都市の地図や絵図は見ているだけで楽しいですから、今回も期待して見に来たという次第です。


そんな前口上はともかく、展示を見ていきましょうか。
展示は冒頭から、江戸名所図屏風が登場します。

江戸名所図屏風(1)
ということで、いきなりのメインです。本来は屏風ですが、今回はあえて平面にして展示されているので、巨大絵巻を立てているようにも見えます。
描かれているのは江戸初期の江戸の賑わいですが、水路と船が目立ちますね。江戸は水の町だったのですよ。
そのほかには、江戸前島が劇場だらけだったり、三越が巨大だったり、神田明神がにぎわっていたり。川と船と祭りと芸と、江戸の町は大騒ぎです。
あとついでに、神田明神の手前にある川に崖が見えるのに、ちょっと喜んだり。神田川の開削が絵になってるのも楽しいですわ。
江戸風俗図屏風(3)
こちらは浅草寺の賑わいを描いたもの。相撲だったり競馬だったりが行われていますね。また川で花火もやってるし、舞台で劇もやってるし。実に大賑わい。
また珍しいことに、周辺には洗濯とか、織物とか、娯楽を下支えする職人さんも描かれているのが面白いです。


この先では江戸名所図のある意味元ネタともいえる、京都の名所風俗図を見ていきます。

洛中洛外図屏風(7)
洛中洛外図というと舟木本のような人が沢山いるのを思い出しますが(いや、舟木本は人多すぎですが)、この展示されているのは人の少ない、建物洛中洛外図とでもいった感じのものです。伏見城と二条城が同時に描かれているのが珍しくて、政策時期の特定に使えそうな。
祇園祭礼図屏風(8)
祇園祭を描くものは洛中洛外図などに多くありますが、これは祇園祭だけを描いたもの。とても細密な描き方で、もしかしてこれは記録用では?と思わせるものがあります。


続けて「江戸名所図屏風」の後に続く流れを見ていきます。名所図屏風には風景画としての側面と風俗画としての側面がありますが、そのうちの風俗画としての側面を見ていきます。

菱川師宣「江戸風俗図巻」(12)
なるほど、風俗画は浮世絵に通じるのですね。というわけで肉筆浮世絵の菱川師宣さんが登場します。線の細さとS字の女性と桜の描き方が、この人らしい作品。色の良さも注目です。
菱川師平「春秋遊楽図屏風」(16)
この屏風、右側と左側で趣が異なっていて、右側は外で輪になって踊っているのに対して、左側は室内でくつろいでいる絵になっています。風俗画は時代が進むと右側から左側に進んでいくイメージがありますね。


最後に、「江戸名所図屏風」の後に続く流れのうち、風景画です。

北尾政美「隅田川眺望図」(23)
浅草寺から見た隅田川、というか大川ですが、その大川の先に筑波山も見えて。中々の鳥瞰図です。
鳥文斎栄之「乗合舟図」(25)
船の上に乗っている美人がメインのように見えますが、実際には奥にある対岸の桜や、川面のゆりかもめなどがメインで描きたいものじゃないかしら?


ちょっと個人的に好きな鳥観図の展覧会ですのでテンションが上がってしまいましたが、江戸の賑わいの大きな要素に川があるというのを強く感じました。やっぱりね、少し川を埋めて道路にしたところは、川に戻してみたくなりますわな……(って、美術展の感想になってないぞ)