サントリー美術館で、宮川香山展を見てきました。
今年は宮川香山の没後100年ということで、あちらこちらで宮川香山展が開かれています。ちょうど今も、サントリー美術館以外にも岡山県立美術館でも同時開催だったりする状況です。
その宮川香山の作品は、元々輸出向けに作られていたという経緯もあって日本には余りなかったのを、熱心なコレクターが買い戻して日本に帰ってきているものが多いです。そのコレクターの筆頭が田邊哲人。今回の展覧会はその田邊哲人コレクションを中心にした構成となってます。
ということで、展示を見ていきましょう。
まずは入口を入って最初に登場するのが「高取釉高浮彫蟹花瓶」(139)。大柄で浅めの花瓶のふちに、リアルなカニが止まっている作品です。
実はこれと同じようなものが東博にあって、そちらは重要文化財になっているのですが、これはその東博の作品をベースに、後で思い出して作ったもの、と言う位置づけだったと思います。
このカニね、足の節とかとてもリアルでぇ。あまり身は詰まってなさそうな雰囲気までリアルですわ。
そのカニの後ろには3つの作品があって。
まず、「高浮彫桜ニ群鳩大花瓶」(38)。これは筒状の花瓶に鳩と春の花が浮き出しているもの。鳥もですが、木の枝もリアルなのが目を引きます。
「高浮彫牡丹ニ眠猫覚醒蓋付水指」(17)は、ふたの取っ手に当たる部分にかわいい猫さんが。この猫さん、耳の中の血管まで見えるのとか、足の筋肉の感じとか、リアルですなぁ。
3つめの「高浮彫孔雀ニ牡丹大花瓶」(45)は、花瓶に大きな孔雀がへばりついていて。立体的過ぎて影が消せないという大きさが凄いです。
と、冒頭の4作品でしっかり度肝を抜いた上で、展示は本編に入ります。
まず第1章は、高浮彫を始める前の時期。舞台は京都、岡山、横浜と転々とします。
この時期は仁清っぽい作品も多いのですが(というか、それがこの時期の京都のスタンダード)、そうじゃ無い作品に良いものがありましたね。
「伊賀手高浮彫春日香合」(7)は、紅葉の形の中に鹿が立体で描かれているもの。大きさ的には、もみじまんじゅう、ですね。こういう小さいのは欲しくなりますわ。
それからコーヒーカップもあって、「粉彩金彩風景図カップ&ソーサー」(14)は、中国風の風景画描かれていて、いかにもこの時期の輸出用作品だなと。高浮彫の前は、こういった作品で西洋受けを狙っていたようです。
そして第2章は、高浮彫。4階のフロアのほぼ全てを使って、これでもか〜〜〜〜という数の高浮彫が並びます。
正直……沢山あって食傷気味になったのは内緒です……。
数も多いので、箇条書きで簡単に。
- 「高浮彫蓮ニ鼠花瓶」(21)
- ネズミが浮き出てきた。足細い、けど、その細さがなんか如何にもネズミっぽい。
- 「高浮彫柘榴ニ小禽花瓶」(29)
- 高浮彫以外の地肌が白で、色的にも浮き立ってる。
- 「高浮彫南天ニ鶉花瓶」(26)
- 羽ばたく鶉。羽が出っ張りすぎないように、片方の羽はすぼめた感じ。
- 「高浮彫柿ニ鳩花瓶」(39)
- 鳥も実も出っ張ります。
- 「高浮彫岩滝ニ鷹花瓶」(32)
- 羽の広がってるのが、尾羽も含めてリアル。
- 「高浮彫桜ニ鷺大花瓶」(43)
- サギ!(水でなく木の枝でいいのかな?)。狩野派の絵から抜け出してきたような。
- 「高浮彫牡丹ニ眠猫覚醒大香炉」(18)
- この猫も、耳の中の毛までリアル。
- 「高浮彫葡萄ニ団扇花瓶」(70)
- 葡萄。小さい玉を沢山。
はい、数が多すぎで途中で飽きてます……。
下のフロアの3階に降りて。吹き抜けのフロアに展示されている作品は撮影可能でした。ということで。
高浮彫の部分をアップで。
羽の部分とか、やはりすごいですね。
こちらも部分をアップで撮影。
とにかく、作るのが大変そうだよなぁ。花の蕾をついばんでるのとか、確かにこういう鳥さん、いますね。
写真で拡大すると、高浮彫の凄さが更に見えて来るような気がします。
最後の第三展示室では第3章。ここでは高浮彫以降の作品、とくに釉下彩!。もうね、淡い色彩の透けるような磁器がどれも素敵ですわ。
- 「釉下彩盛絵杜若図花瓶」(119)
- 淡い、透けるような磁器。なんかアールヌーボーにも通じるデザイン。
- 「釉下彩白藤図瓜形花瓶」(121)
- これも背景の薄紫が良い。
- 「釉下彩猿蟹合戦図花瓶」(86)
- 手長猿さんかわゆいです。
- 「釉下彩花卉図蘭鉢」(127)
- このピンクも品があって良い。
- 「釉下彩藤花図大花瓶」(117)
- 輪郭線のない藤の花も素敵です。
なんか、高浮彫を大量摂取して胸やけ気味だったのもあって、食後のデザートにゆずのシャーベットが出てきたような心地よさが有りましたわ。
ということで、超絶技巧の大量摂取は胸やけの原因になるんだなぁ……って、〆の感想がそれでいいのか?