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始まり、美の饗宴展~素晴らしき大原美術館コレクション@国立新美術館

土曜日に行った、国立新美術館での大原美術館展。岡山の人間としてはちゃんと感想を書くべきよね、ということで書いてみました。
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まあその、感想と言うよりは各作品の思い出語りなんですが……。


では、第1章から順にいってみましょう。

1章:古代への憧憬

この章には、古代エジプト・中近東の作品と、古代中国の作品が併せて展示されていました。通常では古代エジプト・中近東は児島虎次郎記念館のオリエント室、古代中国は東洋館に展示されるので、隣り合うこと自体が珍しいことです。また、オリエント室も東洋館も照明や展示ケースが昔ながらなので*1、最新の照明で見え方が全く違っているのが印象的。なんか、軽やかなんですよね。

2章:西洋の近代美術

そして古代を抜けると、そこにはエル・グレコの「受胎告知」が。倉敷と同様、濃い青の壁紙をバックにしているのでなんとなく普段と似た雰囲気に見えますが、良く見ると、いつもよりも高い位置に展示されているようです。なので、少し見上げるような感じで見ることになりますが、その分、闇の中から現れるガブリエルや鳩も、いつもよりも格好良く見えます。

グレコの後には、普段の大原だと本館の1階・2階に展示されている展示される作品が続きます。

アマン・ジャン「髪」
大原美術館のコレクション第1号。照明が綺麗に当たってることもあって、あれ?こんなに明るい絵だったっけ?と思ってしまったり。
セガンティーニアルプスの真昼」
アルプスの真昼」と言うタイトルの作品はスイスのセガンティーニ美術館にもありますが、大原美術館のは女性が木の枝に持たれているのと、羊が女性に近いところが大きな違いです。大原美術館のものの方が生きている感じがあって私は好きなんですが。
この作品をちゃんと見るのは久しぶりな気もしますが、結構遠近感があって、奥に行くほど線描の線が細く短くなっているんですね。
ギュスターヴ・モロー「雅歌」
モローさんの水彩で繊細な作品。沢山の色を丁寧に使って、人物ははっきりと、背景はぼんやりと描き分けてます。
モローの作品は大原美術館以外にも横浜美術館国立西洋美術館でも見ることが出来ますが、℃の美術館でも、モローの作品だけ、周りとは違う空気感を感じるんですよね。
シャヴァンヌ「幻想」
いつもだと大原美術館本館1階の、2階への階段入口の隣辺りに展示されていることが多いでしょうか。少し緑がかった作品に、背景の壁紙も緑がかっていて、作品自体が壁紙に溶け込みそうな。そういえばこの作品も、照明が綺麗にあたって、いつもよりも明度が上がってるように感じました。
ピサロ「リンゴ採り」
これはピサロが点描モードだった時の作品。点描なので立体感は乏しいのですが、日の当たってる部分と影の部分がくっきりと分かれていて、これもありだなぁと思います。
モネ「睡蓮」
児島虎次郎が画商を通さずにモネに直接交渉して手に入れた睡蓮。大原美術館のコレクションには、こういった逸話が色々あります。
この睡蓮はかなり水面をアップで描いているので、若干抽象度も高い気もします。

ちなみに、大原美術館にはモネの睡蓮を分けてもらったのがあるのです。設置場所が今ひとつなんですが。
ルノワール「泉による女」
ルノさん。裸婦は得意じゃないしと思ってましたが、改めてみると体が背景に溶け込んでいたり、結構斬新な描き方なんですね。
マティスマティス嬢の肖像」
マティスの娘さんを描いたもの。そういえば、ブリヂストン美術館の縞シャツの女性もマティスの娘さんでしたね。

3章:日本の近代洋画

一般の方にとって大原美術館といえば、2章に展示されていた西洋絵画のイメージでしょう。ですがまだ全体の3割も見てないわけで、これからが大原美術館の本領発揮なのです。

ということで第3章、普段は分館の1階に展示される日本洋画から20点弱がやってきていました。大原美術館の近代日本洋画には、関根正二小出楢重など得意でない方の作品が常時展示されているので実はあまりちゃんと見ていません。そもそも展示室が狭いので、今回の方がいつもよりも展示数が多い気までするのですが……。

不得意な作品は横において、メモした作品だけ箇条書きで。

青木繁「自画像」
天上天下唯我独尊。もう見るからに厨二病青木繁さんです……。これって大原だったんだ。てっきり石橋かと。
児島虎次郎「和服を着たベルギーの少女」
大原美術館の看板娘さん。ベルギー印象派の色飽和が気持ちいいよね。
あと、個人的には児島虎次郎の「睡れる幼きモデル」も併せて展示してしてほしかったなぁと。あの子も可愛いのよ。
岸田劉生「童女舞姿」
麗子ちゃん、このポーズを長時間するのは大変だっただろうなぁ(以前見た岸田劉生展で、モデルをやるのが大変だったという話を見て、どうしてもその視点になる)
古賀春江「深海の情景」
春江さんの作品。えっと、今までに大原美術館で見た記憶が無いぞ(汗)。水底の海の中には、猫の顔と人の形をした人魚が棲んでいるのです……。
藤田嗣治「舞踏会の前」
この作品は普段は分館では無く本館のほうに展示されていて、日本美術では無く西洋美術の扱いになっています。最近、東京芸術大学で修復したのが終わって芸大美術館で展示されたのに続いての展示になります。ということで実はまだこの作品、倉敷に帰ってないわけで。速く倉敷でこの作品を見たいものです。

4章:民芸運動ゆかりの作家たち

普段は工芸館にいる、民芸の焼き物などを展示しています。土蔵を改築した工芸館は、

と中が分かれてますので、これらの人々の作品が続きます。
といっても、当方は民芸の作品が今一つよくわからんもんで……。

冒頭にあったのは棟方志功の「二菩薩十大弟子板画柵」。何度か見てますけど、あまり十大弟子と菩薩ってことを意識して見てませんでしたわ。版木の長方形が制約になって、あんな風に首が苦しそうな絵になってたことに初めて気づきました。
それから芹沢銈介の「沖縄絵図」。沖縄の絵地図を型絵染めで描いたものですが、随所に沖縄の文様があるのが印象的です。

5章:戦中期の美術

児島虎次郎がパリを拠点に作品を収集していたのが1919年から1921年なので、それ以降の作品と言うことになります。ただ、このあたりの作品を収集するのは戦後になってからだと思いますので、量的にはあまり多くありません。

そんな中、ピカソの「頭蓋骨のある静物」は、普段は意識しない戦争を絡めた文脈で見たせいか、いつもとは違って見えました。なるほど、これも一つの戦争画なのですね。

6章:戦後の美術

この辺り、大原聰一郎理事長の時期で、現代美術の著名な方のものを少し仕入れてます。
この時期で一番は、ジャクソン・ポロックでしょうか。キャンバスを切り取ってしまう作品が収蔵されてますが、切り取るって発想がすごいよなぁと。

7章:21世紀へ

そして最近。大原謙一郎理事長と高階秀爾館長の体制になってから、「ARKO」や「AM倉敷」など、現代作家に倉敷に来てもらって作品を作ってもらう、という企画が出てきます。もう10年以上やっているので、これらの作品もだいぶ数が増えました。問題は展示スペースが増えないので倉敷では展示する場所が余りないことで、こういう一括してみる機会は重要です。

福田美蘭安井曾太郎と孫」
これは有隣荘特別公開の時に描いたやつでしたっけ?。安井曾太郎が孫の姿を描いた様子を想像して書いているの、微笑ましくて良いです。
津川みゆき「View – "Cycle" 26 Feb.–10 Apr., 05」
確か津川さんはARKOの1回目の招聘画家だったと思います。この方は色の使い方や広がりが好きなんです。大原で見て、良さに気づいた方です。
北城貴子「Reflection ― muison–so ―」
風景画のような、そうで無いような。実際にあるような、そうで無いような。そんな絵で吸い込まれる感じをいつも感じる人です。
町田久美「来客」
しっぽ可愛い(そこかよ)。
谷保玲奈「繰り返される呼吸」
2014年のARKOでの招聘画家さん。2014年は見に行けてないので初見です。極彩金魚がなんか凄い。

と、金魚で思い出しましたが、大原美術館にはウーパールーパーもいるのですが、それは来てなかったんですね……。


とまぁこんな感じで大原美術館展。普段見ている作品でも照明と空間で見え方変わるなぁと思いました。
ところで、これらの作品が出張中、倉敷大原美術館はどうなってるんでしょうね。これも気になるので、近日中に倉敷に行ってみようと思います。


おまけ:5年ほど前に大原美術館でやったベスト展と、1年ほど前の静岡での大原展の感想を再掲しておきますね。
lunacat.yugiri.org
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*1:というか、土蔵orレンガ造り倉庫を改装した展示室なので、照明は限りなく自然光という感じなのです