サントリー美術館に谷文晁展を見に行ってきました。
今回の谷文晁展、サブタイトルからして「この絵師、何者?」となってまして、要するに何者か一言で言えないのが谷文晁という絵師ということのようです。
実際に展示の一番最初のコーナーは谷文晁の描いた様々な絵~水墨画、洋風日本画、仏画などなど~を並べてありまして、正直焦点が定まりません。
その後も出てくる作品が色々な方向に飛びますので……結果として、谷文晁さんは上手だなとは思うのですが、凄いとまでは感じないという、そんな感じでした。何となくね、ふらっと入った公募展を見ているような感じなんですよ、上手だけど特に心ひかれるものも無い感じが(ひどい言い方)。
ということで、私の感想としては「この絵師、何者?、判らない……」とところでございます。何となくね、老中お抱えの絵師として公務として絵を描いていたので、一方向に才能を延ばす、という展間にはならなかったのかもしれませんね。
といいつつ、判らないといいながらも気になる作品はあるわけで、10作品ほど簡単な感想を書いておきます。
- ファン・ロイエン筆花鳥図模写
- 原色が目を引く、秋田の佐竹さんのところを彷彿とさせる洋風日本画です。所蔵が神戸市立博物館というところに、なるほどねぇと。
- 慈母観音図
- 実に穏やかーな観音さま。淡い色あいが良いです。この作品とさっきの原色洋風日本画がほど近い位置に並んでいるのですから、もう何がなんだか判りません。
- 那須眺望図
- 結構この方、旅行先での風景図を描いてます。こういうの好きだわ。これは那須野原から南の方を見た風景ですが、ひたすら平面な関東平野の奥に、富士山と筑波山が見えてて手。正確に見えますけど、富士山の高さは誇張していますね。
- 楼閣山水図
- 判りやすい山水図の掛け軸。建物は定規使って細かく描いてて、その根気よさに惹かれますね。
- 神奈川風景図
- 神奈川宿の方から横浜方面を見ている図ですが、本牧の辺りから始まる屏風ヶ浦の断崖ってこんなに見えるかなぁ?と思ったり。
- 隅田川両岸図
- 隅田川を描いている、左側が栄えているので南から見ている。だけど富士山もちゃんと見えてる。えーと、何処から見てるんだ?これ。
- 熊野舟行図巻
- 熊野の本宮は川の中にあるのがよく判る絵になってますね。熊野本宮大社は明治になるまでは川の中州にあったのです。
- 石山寺縁起
- 石山寺縁起は全巻を昨年の10月に見てますが、今回はそのうち谷文晁が描いた6巻~7巻と、それ以外の巻の谷文晁が描いた模本が出てました。昨年10月のときも谷文晁の絵は今一つと思ったのですが、今回もあまり感想は変わらずで……。
- 棲鸞園画帖
- 木村蒹葭堂と関係すれば若冲はんも出てくるわけで。隣の松村景文の桜が良い感じです。山桜の色って好きだわ。
- 富士山図屏風
- お前は横山大観か、と突っ込みたくなる大きな富士山。富士の頂上のところが単純化されずに右側の嶺が一番高く描かれているのが実物を見て描いたと判って良いですわ。