東京芸大美術館でのダブル・インパクト展を見てきました。
上の看板がこの展覧会のキーヴィジュアルですが、このヴィジュアルにある2つのインパクトの有る作品を展示する展覧会という意味ではなく、明治維新前後の時期に、アメリカが日本美術に衝撃を受け、日本は欧米の美術に衝撃を受けた、その2つの衝撃について見ていこうという展覧会です。って、ちょっとタイトルから内容が判りにくいですね。
しかも展示されている作品は、ボストン美術館が収集した日本美術と、芸大美術館が保有する日本美術ですので……要するに「ボストン・芸大両美術館所蔵近代日本美術優品展」で、そこに日本の近代化を味付けして展示しているような感じです。
この辺りの近代化の流れのような話は他の展覧会でも見聞きしているので、以下は自分にとってインパクトのあった作品を並べます。
- 河鍋暁斎「蒙古賊船退治之図」
- 尊皇攘夷のご時世に描かれましたので、過去の攘夷の成功例として描かれているのですが……、敵艦が爆破して飛び散っていたりして、これは日露戦争の日本海海戦図なのではないかと……。
- 歌川芳虎「万国名勝尽競之内仏蘭西把里須府」
- 想像で描いたとはいえ、パリなのに水の都なのが……。
- 鈴木長吉「水晶置物」
- これは万国博覧会用に作られたものでしたっけ。台の装飾も凝ってますが、それよりも水晶の大きさに目を奪われます。この大きさだと、相当高貴な方の運命も占うことが出来そうです。
- 濤川惣助「七宝瀟湘八景図額」
- 瀟湘八景の水墨画を七宝で。やりすぎき感が凄いです。
- 柴田是真「千種之間天井綴織下図」
- 明治宮殿の天井画に描かれていた作品の、これは下絵です。明治宮殿は1945年5月に焼けてしまってますので、下絵を元にいつか再現できると良いのですが。
- 旭玉山「人体骨格」
- 椅子に座ってる人体骨格。科学模型ではなく工芸品の扱いだったそうですが、全関節動きますという作りは凄いです。
- 柴田是真「野菜涅槃図蒔絵盆」
- 涅槃という部分はよく解らなかったのですが、是真さんの漆で表現した野菜の漆黒が美しい。
- 楊州周延「チャリネ大曲馬御遊覧之図」
- 明治初期の錦絵が展示されているコーナーから。明治帝が曲芸を見ているシーンという。なかなか微笑ましいです。
- 安達吟光「貴女裁縫之図」
- 鹿鳴館で着るおよーふくは自分で作るの図。この時代のおよーふくはフリルが多くて、好みでございます。
- 楊州周延「浅草公園遊覧之図」
- 1891年の絵ですが、この時には既に浅草十二階があったんですね。
- 小林清親「鶏に蜻蛉」
- 小林清親を集めたコーナーも有りました。その中の1枚。この絵は版画で油絵に挑戦したような感じで、鶏が油絵のような発色をしているのが(ちょっと川村清雄の発色にも似たような?)
- 岡倉秋水「悲母観音」
- 狩野芳崖の悲母観音を写しとったものですが、階調が少なくなっているあたりに画家の技量が。隣に芳崖の悲母観音も合わせて展示されていて公開処刑状態でしたが、やはり芳崖のほうが細かさや階調の豊かさに断然と差がありました。
- 菱田春草「月の出」
- いくらなんでも朦朧体すぎて、逆にインパクトが……
- 西村五雲「熊図屏風」
- 京都画壇の作品も若干展示がありました。こちらの白熊さん、これは京都動物園で描いたのでしょうかね?
- 初代五姓田芳柳「明治天皇像(画稿)」
- 明治帝の御真影として有名なやつの下絵です。下絵の段階でも充分に細かくて、やはり帝を描くとなると色々と神経を注いだんだろうなと感じます。
と、書き出してみるとかなりインパクトの有る作品が多かったようです。やはり明治維新の時代が変わる時代、芸術の分野にもパワーがみなぎっていたということなんでしょうね。
おまけ:芸大構内に咲いていた桜を2枚ほど