月猫ツーリスト雑記帳

かわいいものを求めて西へ東へ右往左往の記録

国宝源氏物語絵巻@徳川美術館

名古屋の徳川美術館で国宝の源氏物語絵巻を全巻まとめて展示するというので、最終日に駆けつけてみました。
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源氏物語絵巻は現在、絵の部分だけを数えると徳川美術館に15面、五島美術館に4面が残っていますが、基本的には2面程度を年に1度、春に五島、秋に徳川が1週間程度展示するだけとなってます。ですが、5年に一度、1の位が0の年に五島美術館、5の年に徳川美術館で全巻を集めた展示が行われます。

ですので前回は2010年に五島美術館で全巻展示をやりました。そのときの駄文はこちら。
lunacat.yugiri.org
正直5年前に見ているから今回はパスかな、とも思ったのですが、きっと東京よりも名古屋のほうが空いているだろうというのと、5年後の2020年の混雑が想像できない(だってねぇ、東京ですし五輪ですし)ので、今回見ないと10年待ちかも、と思ってしまったのです。


ということで辿り着いた徳川美術館ですが、旅費を少なくしようと高速バスなんかで行ったのもあって到着したのは15時過ぎ。で、入場券を買う所こそ列は無いのですが、1列目で見るなら60分待ち、肩越しに見るなら待ち時間無しという看板が入口にありまして。当然ながら5年ぶり2度目でもありますし、肩越しに見ることにしたのでした。
展示室では、壁に沿って原本が並び、中央に復元模写が配置されていましたので、両方を比較してみることで色々と細かいところが見えてきました。これは1列目で原本を眺めているだけでは判らない利点でしたね。


以下、各面の感想をいくつか書いてみたいと思います。

  • 蓬生……末摘花の屋敷を訪ねる場面、色あせてもなお、屋敷の崩れは照る様子が判るというのが何とも。足を踏み外さないように……。
  • 関屋……逢坂の関。牛車や従者などはだいぶ見えにくくなっているもの、山深い様子は今でもよく判ります。今じゃトンネルであっという間の区間ですが、昔は通るのが大変だったのです。
  • 柏木(一)……女三の宮が出家するのを阻止しようと朱雀院がやってきた場面。宮も院も女房も、みんな泣いているのが今でも判ります。女房の重ねの鮮やかさも。
  • 柏木(二)……死の直前の柏木と、それを見舞う夕霧。屏風に描かれているやまと絵が、結構はっきりと残ってます。
  • 柏木(三)……光源氏が生まれたばかりの薫を抱く場面。今回の展示の前に行われた修理の過程で、薫の手が源氏のほうに伸びている下書きが見つかったそうですが、無邪気な薫を見て光源氏が因果応報を感じる場面ですので、手を伸ばした構図というのも有りだと思います。
  • 横笛……子供が泣き出したのをあやす雲居雁が、もうあんたが笛なんか吹くから泣き出したじゃないの!と夫の夕霧を攻める場面。なんか色あせても気が強うそうですわ、雲居雁さん……。
  • 夕霧……夕霧の読んでる手紙を浮気相手からのだと思って横取りしてしまう雲居雁さん。本当にこのお二人、出会いは筒井筒でしたのに……。
  • 竹河(二)……玉鬘の娘である大君と中君が以後を打っている場面。女房も併せて女性が6人、お衣装がとても豪華でね、色あせる前は目映かったでしょうね。
  • 宿木(一)……宮中で帝と薫が五番を囲んでる場面。すっかり色あせてますけど、よく見ると宮中の家具類は装飾も豪華なようです。
  • 宿木(三)……琵琶を抱えた匂宮と、それを聴いている中君。左の方にある秋草は今ではすっかりやせてしまってますが、描かれた当初は萩が繁茂していたようです。


源氏物語絵巻のようにストーリーが頭に入っている物語の絵巻物は、たとえ色あせていても、その場面を思い出しながら絵を見ることが出来るのが良いです。
描かれた頃の人々も、そうやって絵と物語を行ったり来たりして楽しんだのでしょうね。